日本の英国で味わう極上のフレンチ
森林が生い茂る標高1000メートル、私はいつもの生活からわずかなタイムスリップを試みた。澄んだ空気に流れる雲、青空は手の届きそうなくらい近くに。緑が色鮮やかに目の前に広がり、厳しい冬の寒さから春へ移行しようとする情景がやけに静かだ。
石畳の道にヨーロッパを感じる
中世英国貴族の館・マナーハウスを再現したブリティッシュヒルズ。7万3000坪の敷地にそびえたつ施設は堂々と、広大な存在感を放つ。建設当初は学校法人佐野学園に通う学生たちの国際研修センターとして利用されていたが、現在は一般の宿泊、日帰りでの来場や語学研修の場として広く公開されるようになった。資材のほとんどを英国から取り寄せ建設された町並みが「パスポートのいらない英国」と言われる所以だ。
日本の国土で英国さながらの雰囲気を体感できる場所としてホテルとはまた違った趣を感じながらゲストハウスに宿泊し、夜は伝統的なフランス料理を味わう。日常から少し離れて息抜き、そんな週末の過ごし方は非日常この上ないものだ。
大食堂の脇には静かな空間が用意されている。
高い天井に露骨に組み込まれる支柱が特徴のクイーンズ・ポスト様式と言われる中世様式の大広間。大学やパブリックスクールの食堂をリフェクトリーというのだが、それをイメージして建設されたダイニング。そこでは季節の食材を生かしたクラシカルなコースが贅沢に堪能できる。
食前酒とアミューズはサロンでいただく
まずは英国風にシェリー酒で乾杯。アルコールがくっと胃を刺激して、食欲が湧くアペリティフ。前菜は「本日白身魚とタンバル仕立てと天使の海老 英国ハチミツオレンジソース」。“天国に一番近い島”と言われるニューカレドニアの大自然の中で添加物を一切使わず養殖されている天使の海老。フランスで最高品質の証である「クオリサート」の称号をもらった唯一の海老だ。凛とした見た目とバランスのとれた味。その周りを飾るハチミツオレンジソースとビネガーのきいた酸味のあるソースが対照的で非常に調和がよい。
ソースの味わいが実に心地よい