震災から1年が経過するも、がれき処理はいまだ解決の糸口が見えない状態が続く。
読者の皆さんは今年(2012年)3月11日の午後2時46分を、どのように過ごされたでしょうか?―― 前例のないマグニチュード9.0の巨大地震、最大波10メートルにも及ぶ大津波の襲来、そして、福島原発の事故による放射能汚染という3重苦に見舞われた東日本大震災から1年が過ぎました。
いまだ34万人が避難所生活を余儀なくされ、また、がれき処理を巡る解決の糸口は見えない状態が続いてはいますが、震災直後の最悪期は脱し、ゆっくりながらも本格的な被災地再建へと復興の足取りは進んでいます。一時は停滞した不動産市況も、昨秋ごろから回復経路をたどり始めています。市場の地合いが明るさを取り戻しつつあることは間違いないでしょう。
しかし、これで地震の恐怖から完全に解放されたかいえば、残念ながらそうとは言い切れません。“次なる恐怖”が私たちに襲いかかろうとしています。
東京大学地震研究所が1月23日、「南関東でマグニチュード7クラスの地震が今後4年以内に起こる確率は70%に高まった可能性がある」との発表をしました。「今後30年以内に発生する確率は70%」としていた政府の評価を大きく揺さぶる結果となりました。また、3月7日には首都直下地震の1つ「東京湾北部地震」について、文部科学省のプロジェクトチームから「最大でも震度6強としていた従来の被害想定が最大震度7に引き上げられた」ことが報告されました。地震を引き起こすプレートの境界面が従来予想より最大で約10キロメートル浅いことが判明したためです。
世界有数の地震国である日本に住んでいる以上、地震から完全に逃れることは不可能です。先の大震災から1年が経過したからといって、気を緩めてはいけないのです。前述の2つの研究結果から言えることは、これまで以上に緊張感を持って、想定される巨大地震に備えることが肝要である ―― ということです。天災は忘れた頃にやって来ることを、今一度、心しておく必要があるでしょう。
阪神淡路大震災と同じ「活断層」による地震が、東京西部でも起こる可能性あり
ここで、切迫性が高まる首都直下地震について簡単におさらいしておきましょう。
ひと口に首都直下地震といっても、実はその切迫性や震災ダメージの程度に応じて18のバターンが想定されています(文末参照)。そして、最も地震発生の蓋然(がいぜん)性が高く、また、想定被害も著しいことから、得てして「東京湾北部地震」が18パターンの中心想定例として取り上げられます。
参考までに「東京湾北部地震」と「阪神淡路大震災」との地震規模を比較してみると、ケタ違いの甚大さ(被害状況)なのがお分かりいただけることでしょう(下表参照)。どちらも同じ規模(M7.3)の首都直下型地震ではありますが、密集度の高い「東京湾北部地震」のほうが被害はかなり大きくなります。
次に地震発生のメカニズムを見てみると、6400余名もの尊い命を奪った阪神淡路大震災は活断層による地震でした。兵庫県の淡路島にある活断層「野島断層」が動いて起きた地震です。
実は、想定される首都直下地震18パターンの中にも活断層による地震5パターンが含まれており、その1つ「立川断層」については首都圏に大きな地震を起こす恐れがあることから、政府の地震調査研究推進本部が2012年度から重点的に調査を行う方針を決めています。
首都直下地震というと「東京湾北部地震」ばかりが注目されがちですが、「立川断層帯地震」も見過ごせない危険をはらんでいるのです。地震調査委員会による長期評価では、今後、マグニチュード7.4程度の地震を引き起こす可能性が指摘されています。埼玉県の南部~東京の中西部にマイホームを買おうという人にとっては看過できない事態です。
(参考) 【首都直下地震 想定される18パターン】
<プレート境界、プレート内の地震>
(1)東京湾北部地震 (2)茨城県南部地震 (3)多摩地震
<5つの活断層による地震>
(4)関東平野北西縁断層帯地震 (5)立川断層帯地震 (6)伊勢原断層帯地震
(7)神縄・国府津―松田断層帯地震 (8)三浦半島断層群地震
<地殻内の浅い地震>
(9)さいたま市直下地震 (10)千葉市直下地震 (11)川崎市直下地震
(12)横浜市直下地震 (13)立川市直下地震 (14)市原市直下地震
(15)羽田直下地震 (16)成田直下地震
(17)都心東部直下地震 (18)都心西部直下地震
そこで、次ページでこの「立川断層帯」について詳しく見ていくことにします。