労務管理/職場でのメンタルヘルス対策

現場任せはNG! 組織的メンタルヘルス体制の構築

メンタルヘルス対策を従業員本人や現場の管理職だけに任せるのではなく、組織的にメンタルヘルス体制を構築することが重要です。今回は、事業所内の産業保健スタッフによるケア、事業場外資源によるケアの進め方のほかに、予防の観点から1次予防(不調者発生の予防)、2次予防(不調者の早期発見・早期対応)、3次予防(休職・復職支援)について説明しています。

本田 和盛

執筆者:本田 和盛

企業の人材採用ガイド

前回の記事(企業におけるメンタルヘルス対策の進め方)では、メンタルヘルス対策の「4つのケア」のうち、セルフケア(本人によるケア)とラインケア(上司によるケア)について説明しました。セルフケアとラインケアはもっとも基本的なメンタルヘルスケアですが、これだけでは不十分です。今回はさらに進めて「産業保健スタッフによるケア」、「事業場外資源によるケア」の進め方について説明します。

産業保健スタッフによるケア

産業保健スタッフによるケアを進める

産業保健スタッフによるケアを進める

■産業保健スタッフによるケアの必要性
部下のメンタルヘルス対策は直接的には職場の管理職が担当し、人事部の人事労務管理スタッフがサポートするのが基本です。しかし専門家でもない管理職が部下のメンタルヘルスのすべてを管理することは不可能です。そこで産業医や保健師といった専門的知識を持った社内の産業保健スタッフを活用する余地が生まれます。産業保健スタッフとは次のような人達です。
  • 産業医
  • 保健師
  • 衛生管理者
  • カウンセラー
この中では産業医の位置づけが特に重要なので、ここでは産業医について説明します。

■不調者対応のアドバイス等が産業医の役割
労働者数50人以上の事業場では産業医の選任が義務付けられています(労働安全衛生法13条)ので、中小企業でも産業医と嘱託契約を結んでいる会社が多いと思います。会社の状況を熟知している産業医にはいろいろな役割が期待されますが、メンタルヘルスの観点では次のような場面での活躍が想定されます。

■メンタルヘルス施策の企画・実施への参画
産業医は、総括安全衛生管理者(通常は工場長など事業場のトップがなる)に対して職場の安全衛生について勧告する権限が法的に認められています。本来であれば企業のメンタルヘルスの総括として強いリーダーシップを発揮することができるポジションにあります。

産業医には従業員の健康相談や健康診断の有所見者に対する保健指導、長時間労働者に対する面接指導など法定の役割に留まらず、メンタルヘルス施策についても積極的にアドバイスを貰いましょう。たとえば時間外労働の上限時間の設定やメンタル不調者の予防策、不調者の配置や異動に関する配慮事項、問題がある部署に対する改善策を会社といっしょになって考えて貰ってください。

■メンタル不調者に対するアセスメント
メンタル不調者や職場不適応者が発生した場合、産業医に本人やその上司と面談してもらい、業務遂行上の支障(事例性という)や本人の病態(疾病性という)を把握してもらった上で、業務の軽減や休職などの「就業上の配慮」に関するアドバイスを貰います。

また本人の病態によっては、外部の精神科や心療内科などの専門医療機関等に誘導してもらいましょう。不調者予備軍を外部の医療機関につなげることは、メンタルヘルスの早期対応として非常に重要です。

■休職者の復職診断
休職者が復職を申し出た場合に、現実の職務との関連で本当に就労可能なのかどうかを産業医に診断してもらいます。具体的には本人の同意を得た上で、本人が治療を受けている主治医から治療の経過や回復の程度、服用している薬、就業上の配慮事項などを聞いた上で復職の可否を産業医が診断します。最終的に復職させるかどうかは会社の判断ですが、産業医の復職診断はそのための重要な判断材料となります。

産業医の選任が義務付けられていない労働者数50人未満の事業場では、「地域産業保健センター」でメンタルヘルスに関する相談や医師の面接指導を受けることができます。ぜひ活用してください。
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