「モラトリアム人間」が増えやすい現代社会 

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成人になっても大人になりきれない訳とは?

心理学者のエリクソンは、青年期は「モラトリアム」の時期であると説きました。

モラトリアムとは、もともとは「債務支払いの猶予期間」を意味する経済用語ですが、この言葉を転じて、エリクソンは青年期を、アイデンティティの確立のために、大人として社会に果たすべき義務や責任が猶予される時期、と捉えました。

ところが現代社会では、このモラトリアムをいつまでも引き延ばしてしまう大人が増えています。精神分析学者の小此木啓吾は、こうした人たちを「モラトリアム人間」と呼びました。

モラトリアム人間が増える背景には、社会の高学歴化によって長い学生時代を過ごす若者が増えていること、晩婚化が普及して結婚を真剣に考える時期が猶予されていることなどが、影響していると言われています。

近年はそればかりでなく、企業の採用人数が激減して就職自体ができにくいこと、少子化の影響から過保護化する親が増え、子どもの自立が阻害されやすいこと、住宅事情や通信技術の向上により、人との関係性が表面的になりやすいこと、情報や進路の選択肢があふれすぎて、進路の方向性を絞りにくいこと、成熟消費社会の進展により、開拓精神や成功体験、社会への還元意識を持ちにくいこと、などなど、モラトリアムを卒業できない理由は増え続けているように思えます。

「18歳成人」を決める前に検討すべきこと 

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大人になる意識を高めることの方が重要

現代社会が「大人になれない大人」が増やしている一方で、成人年齢引き下げの動きが再燃していくことに、非常に大きな不安を感じます。

法律で成人年齢を引き下げても、本人の心に「社会人としての義務と責任を果たしたい」という意識が育たなければ、判断力、責任能力の未熟な若者の消費者被害、嗜好品、ギャンブル、風俗等、依存症の早発の問題が増えてしまう危険性があります。

むしろ、成人前の若者に青年期、成人期の発達課題と自立について心理教育をし、成人が獲得できる権利と労働や納税などの義務について社会教育をすること。職業体験や就業のチャンスを増やして、労働を通じて成人が果たす責任と義務を実感する機会を増やすこと。

こうした試みを行うことで、大人としての責任と義務への自覚と意欲を促すことの方が、重要な取り組みなのではないかと思います。
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