ソウルの聖地、世界遺産「宗廟」
宗廟・正殿。朝鮮王朝の初代国王である太祖・李成桂や、名君と謳われた4代国王・世宗、27代で李氏最後の君主・純宗ら、49位の神位が19室に収められている
実は、ソウルには朝鮮王朝にまつわる3つの世界遺産がある。今回は宗廟・宗廟祭礼を中心に、世界遺産「昌徳宮(チャンドックン)」「朝鮮王朝の王墓群」の概要も紹介しよう。
ソウル中心部に広がる歴史地区
世界遺産「昌徳宮」登録の昌徳宮・敦化門。1412年創建で、昌徳宮の中でも当時の様子をもっともよく伝えている
社稷壇(サジッダン)から東に向けて、景福宮(キョンボックン)、北村(ブッチョン)の韓屋村(ハノクマウル)、昌徳宮、昌慶宮(チャンギョングン)、そして宗廟が立ち並ぶ歴史地区だ。このうち昌徳宮と宗廟が世界遺産に登録されている。
直線距離で4~5km。ブラブラ歩くと結構あるのだけれど、この街歩きが楽しい!
北村に立ち並ぶ韓国の伝統家屋・韓屋
こんなにも歴史的な建造物が集まっているのは、ここが1392年から1910年まで続く朝鮮王朝の中心地だったから。まずは簡単にその成立の歴史を振り返ってみよう。
ソウルの成立と社稷壇・宗廟・景福宮
34位の神位が収められている永寧殿。王や王妃以外にも、太祖・李成桂の父母・祖父母など4代祖もここに祀られている
1394年、李成桂は首都を開城(ケソン)から漢陽(ハニャン)に移す。これが現在のソウルだ。
新しい首都は中国の儒教や風水の考えを取り入れて建設された。「王」とは、天(神)の許しを得て、地を治める者を示す。だから天と交流を行う施設が必要で、まず社稷壇と宗廟が建築された。
「壇」とは王が天と交信を行う場所を表し、「社稷」とは土地の神々を示す。土地の神を祀り、五穀豊穣・国家繁栄を願うのが社稷壇だ。一方「宗廟」とは、先祖の魂が神格化した氏神を祀り、祈りを捧げる場所を指す。宗廟は儒教精神をよく表す施設なのだ。
景福宮の慶会楼。王は見晴らしのよいこの楼で宴を催した
ちなみに、各地の王を束ねる者を「皇」という。ローマの皇帝や日本の天皇などが一例だ。朝鮮王朝も明や清の冊封体制に入っており、中国の皇帝に束ねられていた。その明・清皇帝の宮殿が北京の紫禁城(世界遺産「北京と瀋陽の明・清朝皇宮群」)で、皇帝が天と交信した壇や廟が天壇(世界遺産「天壇:北京の皇帝の廟壇」)だ。
実際宮殿や城壁の形・配置も中国のものに似ているのだが、比べてみると、ソウルも北京も同じような思想で造られているのがよくわかる。