世界最大の宮殿 北京の故宮=紫禁城

天の中心は宇宙の中でも不動を意味する北極星=紫微垣(しびえん)で、そこには天帝が暮らす紫微宮があるという。これに対して地上は皇帝によって治められ、この世の中心には禁断の宮殿・紫禁城(しきんじょう)がある。

今回は、14世紀後半から20世紀はじめまでおよそ500年間にわたって広大な領土を支配した明・清の時代の宮殿である北京の紫禁城を中心に、世界遺産「北京と瀋陽(しんよう)の明・清朝皇宮群」を紹介しよう。

世界最大の宮殿、故宮=紫禁城

景山公園から見下ろした紫禁城。故宮博物院の正門となる手前の神武門から反対側の天安門へと巨大な建物が一直線に配され、その両翼にほぼ対称に大小無数の屋根が並んでいる ©牧哲雄

景山公園から見下ろした紫禁城。故宮博物院の正門となる手前の神武門から反対側の天安門へと巨大な建物が一直線に配され、その両翼にほぼ対称に大小無数の屋根が並んでいる ©牧哲雄

毛沢東の肖像がかかった天安門。ふたつのスローガンは「中華人民共和国万歳」と「世界人民大団結万歳」

毛沢東の肖像がかかった天安門。ふたつのスローガンは「中華人民共和国万歳」と「世界人民大団結万歳」

北京は驚きの街だ。郊外にある万里の長城の大きさにも驚いたが、市内にあるこの紫禁城の巨大さにも度肝を抜かれた。

紫禁城はその入り口から世界最大だ。まずは毛沢東の肖像で有名なあの天安門。天安門が隣接する天安門広場は縦約900m、横500mの世界最大の広場で、50万人を収容することができるという。毛沢東が建国宣言を行い、天安門事件が起こったのもここ。中国の国章にも天安門の図柄が採用されており、中国のまさに象徴だ。

世界最大の広場から天安門を入ると、ここから奥へ向かって南北961m、左右は東西753mにわたって世界最大の宮殿が広がっている。内と外を分ける堀は幅52m、深さも6m、塀の高さは10mにもなり、日本の城壁がかわいらしく見えるほど。宮殿の総面積は72万平方m以上で東京ドーム約15個分。収められた秘宝は全盛時には117万点にも及んだ。

 

乾清宮の玉座。清の時代、皇帝は次期皇帝の名前を記した詔書を「正大光明」の額の後ろに納め、皇位を継承した(太子密建の法)。ラストエンペラー溥儀が皇位を引き継いだのもここ ©牧哲雄

乾清宮の玉座。清の時代、皇帝は次期皇帝の名前を記した詔書を「正大光明」の額の後ろに納め、皇位を継承した(太子密建の法) ©牧哲雄

部屋数は永遠を表す「久」にちなんで9並びの9999部屋と半部屋で、計9999.5部屋あるといわれている。これを造るために約15年間、一説ではのべ100万人の労働力が投入され、掘り返した土は紫禁城の北に盛り上げられて山となり、現在も景山公園として紫禁城を見下ろす絶景ポイントとしてにぎわっている。

このファースト・インプレッションは強烈だ。とにかく重厚でとにかくデカイ。建物も全体もほぼシンメトリー(対象型)で構成されており、その秩序に乱れはない。天安門から入って奥へまっすぐ歩いていくと巨大な広場と巨大な建造物が次々と現れて、そのたびに「ここが世界の中心なのだ」という自負と、世界の隅々にまで威を唱えようという強烈な意志を感じる。