世界遺産/中国の世界遺産

北京と瀋陽の明・清朝皇宮群/中国(2ページ目)

およそ500年間にわたって中国を支配した明・清朝の中心・紫禁城。世界最大の広場を持つ世界最大の宮殿の迫力は、万里の長城にも劣らない。今回は中国の世界遺産「北京と瀋陽の明・清朝皇宮群」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

紫禁城の構造、外朝と内廷

中国最大の木造建築物、太和殿(金鑾殿)。映画『ラストエンペラー』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』『北京の55日』などの舞台にもなった

中国最大の木造建築物、太和殿(金鑾殿)。映画『ラストエンペラー』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』『北京の55日』などの舞台にもなった

城内は大きくふたつの部位に分かれている。天安門から入ってすぐにある外朝と、その奥に広がる内廷だ。外朝は皇帝が朝廷の仕事を行う場所で、内廷は皇帝やその家族の住居となっていた。

天安門広場を挟んで天安門と逆側に建つ前門(正陽門)。もとは元の時代の門で、紫禁城に入る皇帝とその家族専用の門だった ©牧哲雄

天安門広場を挟んで天安門と逆側に建つ前門(正陽門)。もとは元の時代の門で、紫禁城に入る皇帝とその家族専用の門だった ©牧哲雄

威圧感あふれるのが外朝の午門、太和殿、中和殿、保和殿と続く建物。特に紫禁城の中心といえる太和殿は、映画『ラストエンペラー』で、まだ幼かった皇帝・溥儀に並み居る家臣がひれ伏すシーンで有名だが、これを見ればひれ伏したくもなるというもの。実際重要や式典などはこの太和殿で行われた。保和殿は科挙の最終試験である殿試が行われていた。

その奥が内廷で、歴代のべ24の皇帝が暮らした居住スペース。皇帝や皇后の居室から寝室、庭園まで、数多くの建物や部屋が集中している。有名なのは玉座が置かれた乾清宮や、結婚式や宗教行事が行われた坤寧宮、故宮博物院の正門となる神武門など。それぞれの部屋に歴代皇帝のドラマが詰まっているので、行く前に世界史を少し勉強しておくことをオススメする。

 

故宮博物院

1949年、毛沢東が建国宣言を行った天安門。毛沢東の巨大な肖像画が天安門広場を見下ろしている

1949年、毛沢東が建国宣言を行った天安門。毛沢東の巨大な肖像画が天安門広場を見下ろしている

皇帝が日常の政務を行ったり、寝室として機能していた乾清宮

皇帝が日常の政務を行ったり、寝室として機能していた乾清宮

紫禁城のすばらしさはその大きさだけでなく、収められた秘宝の数々にもある。

現在紫禁城は「故宮博物院」という博物館として一般に公開されている。当時の姿をそのまま公開している部屋がある一方で、文物陳列室として貴重品の数々が展示されている部屋もある。文物陳列室には陶磁器館、青銅器館、工芸館、絵画館、時計館などがあるが、特にオススメは珍宝館だ。ここには清が中国全土から集めた貴重品や、北京に集められた名工たちの手による芸術品が収められている。

 

紫禁城を見下ろす景山公園。風水に基づいて紫禁城の真北に造られており、気の流れを整えたといわれる

紫禁城を見下ろす景山公園。風水に基づいて紫禁城の真北に造られており、気の流れを整えたといわれる

ちなみに、実は故宮博物院は北京以外にも瀋陽故宮博物院、台湾故宮博物院がある。瀋陽は清が政権をとる以前、後金のヌルハチやホンタイジが宮殿としていた場所で、清以前の秘宝が展示されている。

また、太平洋戦争当時、戦火を避けて多くの宝が台湾に送られており、それが保存されているのが台湾の国立故宮博物院だ。台湾の博物院には60~70万点もの収蔵品があるといわれており、世界四大博物館のひとつに数えられている。
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