ジョギング・マラソン/ランニングシューズ、ウェア、グッズ紹介・選び方

三村仁司氏が共同開発した市販シューズついに登場(2ページ目)

現代の名工三村仁司氏がアディダスと共同開発したシリアスランナー向け市販シューズ「adizero TAKUMI」が発表されました。メダリストのシューズ作りのノウハウをふんだんに盛り込んだ納得のできばえ。「日本のランナーを速くする」シューズの登場です。

谷中 博史

執筆者:谷中 博史

ジョギング・マラソンガイド


足に張り付いて一体化

期待はいやが上にも膨らんできました。小生早速2Fの「adizero TAKUMI」展示コーナーに。
まずは「adizero TAKUMI」を手に取り360度観察、シューズ内部、インソールも。そして曲げたり捻ったり押したりつまんだり。
いつものサイズで試し履きしましたが、足入れ時はきつめ。このところ走行距離が減って足もやや肥満化してきたようです。シリアスランナーの足というのは、ボディ同様脂身が削がれているので一言で言えば小さめです。しかし、履いてみれば足全体にピタッと張り付いて違和感が消えてしまったような感触は何とも言えないものです。ついでに先取りして履いた後のことを書くと、履いているうちに窮屈感がなくなっていました。シューズの存在を忘れさせてくれるフィット感、これはやはりアッパー素材の機能によるものでしょう。

意識せずとも歩幅が伸びる「SEN」

戦闘シューズ「adizeroundefinedTAKUMIundefinedSEN」

戦闘シューズ「adizero TAKUMI SEN」

「SEN」「REN」二足を借り出して、それぞれに履いてみたり、左右別モデルの二足のわらじならぬ片っぽずつのシューズにしてみたりで明治通りに飛び出しました。
「SEN」を実際に履いた感触を一言で言うと、「歩幅が伸びる」です。
これは、軽量である(27cmで片足170g)とかグリップ力の良さとともにソールの構造にあるように想われる感触です。

垂直落下の反発を前方に変える

上から落下した反発が真っ直ぐ上に返るのではなく、前方に方向を変えて反発する感じ。パンフレットの表現を簡略化して言うと「着地の衝撃をそのまま推進力に変える高反発EVAとかかと周りの安定性を高める「Lite EVA」の2層のミッドソール構造+蹴り出し時のスナップ効果を高めて蹴り出しの力をロスせずスムーズに発揮できるかかとから爪先までのびた「SPRING TORSION」によって前足・後ろ足の高低差を少なくしてスムーズに足を抜けさせる」ということになります。

ランダムなラバーで確実に力を伝える

「SEN」(左)と爪先がラバーで覆われている「REN」

「SEN」(左)と爪先がラバーで覆われている「REN」

グリップ力の良さも強く感じられました。試走した路面(歩道)はぴかぴかに磨かれ、雨天時は随分滑る人がいるのではないかというような表面でしたが、そんな路面でもなんら不安を感じることなく全力で着地でき蹴ることができるグリップ感がありました。これならガラスの上でも走れそう。
アウトソールを見ると黒い多数の点となったラバーがついています。一般的には同一の大きさが幾何学的に整列して付いているのが普通ですが、よく見るとそのサイズも配置もランダムであることに気づきます。これも開発段階で苦労したポイントであったようです。
路面をひっかけて走るランナーには小さくて少ないほうがよい(極端に言えばスパイク)、体重を乗せて反発力を生かすようなランナーはある程度の面積がないと反発力が生まれないし安定も悪い、さらに小さくて少なければ耐久性も落ちます。そのあたりのバランスをとりつつランナーのテストを繰り返してたどり着いた結論がこのパターンで「DSPクイックストライク」と命名されています。

駅伝、ロードレースで威力発揮

「adizero TAKUMI」がどのようなランナーや走りに向くのかをまとめてみると、「SEN」の威力を最も発揮できるのは、陸上競技部に所属したりその経験もあるシリアスランナー、あるいはそれに匹敵する市民ランナーの、5kmからハーフ未満のロードレース、駅伝ではないかと想います。フルマラソンでこのシューズの真価を十分に発揮できるのは、相当の筋力がついているエリートランナーでしょう。
というのは、試し履きの感想で述べましたが、ストライドが伸びるシューズだからです。走らされてしまうといったらいいでしょうか。通常より伸びればそれだけ通常はあまり使っていない筋肉を使うことになります。それは筋肉疲労を起こす原因になり故障の原因ともなります。それでは、ストライドを延ばさないように走ればいいかというと、伸びてしまうものを伸ばさずに走るのも体にはストレスになります。スピードランナーがゆっくり走ると疲れるのに似ています。

短い距離やウレタントラックでの練習で慣れる

しかし、疲れるということはトレーニングには必要です。負荷をかけて超回復によって進化するということから考えれば、こうしたシューズを負担の少ない短い距離や、ウレタン舗装のトラックなどでインターバル練習や3000~5000mのレースで履き慣れていくことは、走力をつける上で効果的です。そうした使い方なら市民ランナーの中級レベルの方でも履いてみるといいと思います。エリートランナーの「跳ぶような走り」の感覚を体験できます。

「SEN」と「REN」の履き分け

用途が広そうな「adidasundefinedTAKUMIundefinedREN」

用途が広そうな「adidas TAKUMI REN」

「REN」のテイストは、かなり一般的なランニングシューズに近いものがあります。「SEN」はインソールを接着していますが、「REN」は取り外しできますし、足首周りやタンもソフトなライニングを使用しています。ヒールサポートもがっちりして着地も安定しています。アウトソールも爪先部、ヒール部に耐久性の高いラバーを使用するなどの違いがあります。
クッションも「REN」に比較し格段に高まっており、「SEN」の軽快なレスポンスとはまったく異なった優しい履き心地ですが、アッパー素材と前足部のアウトソールに貼られたランダムなラバーは共通で、フィット感、グリップ感は見劣りしません。この機能で190g(27cm片足)を達成していることに感嘆しました。
中級レベル以上ならフルマラソンにもいいのではないかと思います。通常練習は「REN」で、スピード練習や10kmぐらいまでの中距離レースは「SEN」で、ハーフはどちらにするか迷うところですが、フルマラソンなら「REN」を履きたいというところです。

「日本人を速くする」をコンセプトにした「adizero TAKUMI」。今回発売されたのは、シリアスランナー向けレーシングモデルの「TAKUMI SEN(匠 戦)」(15750円)とシリアスランナーのトレーニング用途モデルの「TAKUMI REN(匠 練)」(13650円)の2シリーズで、共に男性向けと女性向け、そして「TAKUMI REN」にはワイドモデルがラインアップされています。
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