タワーマンション眺望偏重のデメリット
もう20年以上前のこと。一時期だが勝鬨橋の袂のマンションに住んでいたことがある。墨田川に面した東京タワーの見える部屋を社宅として借りていた。銀座から歩ける自宅は想像以上に便利で、都会暮らしはこんなに快適なのかと思ったものだった。その14階建てのマンションは、当時の勝どき界隈ではかなり背の高い建物。だから住んだのは8階だったが、見晴らしは十分確保できた。道路の向かいにはゴルフ練習場があって、晴海通りは勝どきの交差点あたりまで一軒家の飲食店が立ち並ぶ、下町風情がほどよく残っていた。
しかし今ではもうそんな名残はなくなってしまった。タワーマンションが乱立し、築地方面もオフィスビルができたために、相当上まで登らなければ都心の眺望を楽しむことはできないだろう。「東京タワーを望む」希少性は失せ、周辺には20階を優に超えるタワーマンションが急増している。街が新しくなり地下鉄の駅も新設されたために、街全体の評価は上がったが、個別のマンションには負の影響が大きい場合もある。眺望が魅力の都心タワーは長期的な資産性を考慮して選択しなければならない。そんな教訓の典型的な例だと思う。
タワーマンションの問題点
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一部の大手デベロッパーでは、タワーマンションの設計基準を見直す企業が出始めた。今後、タワーマンションを建てるときは「免震」あるいは「免震か制振」を採用すると宣言したのである。これは言い換えれば「タワーマンションに耐震は適していない」といってるようにも聞こえるのだが。今後の業界の動向が注目される。
20階建て以上というひとつのくくりでしかなかったタワーマンションが、「構造によってグレードに差が出る」時代に入ったといえそうだ。高度な技術を求められる超高層建築物には、ほかにもまだ、一般の人にはあまり知られてない分類の仕方があるのだろうか。将来の資産価値を左右しかねないポイントについて考えてみた。