世界遺産/アフリカ・オセアニアの世界遺産

聖カトリーナ修道院地域/エジプト(3ページ目)

紀元前13世紀、神がモーセに啓示を与え、十戒を刻み込んで与えたという伝説の聖地シナイ山。3世紀には天使たちが聖カトリーナの遺体をここに運び込んだという。今回は、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の聖地としていまも多くの巡礼者が祈りを捧げるシナイ山と、その麓にある聖カトリーナ修道院を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

聖カトリーナ修道院地域の見所

正面から見た聖カトリーナ修道院

正面から見た聖カトリーナ修道院。長い間、不毛のシナイ半島は政権の及ばない無法地帯だった。修道院は城塞として守りを固める必要があった ©牧哲雄

聖カトリーナ修道院の城壁

岩と漆喰で固められた聖カトリーナ修道院の城壁 ©牧哲雄

聖カトリーナ修道院自体はとても小さな修道院だ。現在でも20人ほどの修道士が活動を続けているので非公開の場所も多く、おまけにほとんど撮影が禁止されている。

修道院にある教会は、現在は正教会のもの。観光客でも、イコンを掲げる至聖所で祈りを捧げることができる。

 
聖カトリーナ修道院教会

聖カトリーナ修道院内の教会は、正教会の中でも比較的自由な立場をとるシナイ山自治教会に所属している ©牧哲雄

もっとも貴重だといわれるのが修道院図書館だ。聖書はパピルスや動物の皮に文字を書きつけた写本によって各地に伝えられたが、ここにはキリスト教初期の3,000冊を超える写本がある。その蔵書数はバチカン図書館に次ぐ。

2009年にもコンスタンティヌス帝が書かせたというシナイ写本の一部が見つかっており、未発見の写本もまだ数多く存在するといわれる。

修道院の周囲にある柴が、モーセが天使を見たという「燃える柴」らしい。柴は燃え尽きることがなく、炎が消えたあと、焦げた跡さえ見られなかったという。

 

聖カトリーナ修道院地域への道

シナイ山頂から見た景色

シナイ山頂から見た景色。草木ひとつない荒涼たる大地が延々続く。中東はこんな岩石・礫砂漠がとても多い ©牧哲雄

■エアー&ツアー情報
エジプトの玄関口は首都エジプト。エジプト航空の直行便があるほか、アジアやヨーロッパ各国を経由する様々な便がある。格安航空券で10万円前後から。

エジプトへのツアーはやはりピラミッドやルクソール、アブシンベルを回るものがメイン。といってもエジプトには砂漠や紅海でのダイビングなど見所はたくさんあり、探せば聖カトリーナ修道院地域を含む種々のツアーがある。20万円前後から。

■国内の移動
ダハブの海

美しいサンゴ礁が広がるダハブの海 ©牧哲雄

ツアーで訪れるのが一般的だが、カイロやシャルム・エル・シェイク、ダハブなどから聖カトリーナ修道院地域へバスが出ている。

シャルム・エル・シェイクとダハブは紅海沿いのリゾート地。紅海はしばしば世界三大ダイビングスポットにも数えられており、ダイビングやスノーケリングで美しいサンゴ礁を見ることができる。シャルム・エル・シェイクの海浜公園ラス・モハメッドと、ダハブの灯台遺跡は、エジプトの世界遺産暫定リストにも数えられている。

■周辺の世界遺産
カイロには世界遺産「メンフィスとその墓地遺跡 - ギーザからダハシュールまでのピラミッド地帯」「カイロ歴史地区」があり、ルクソール起点で「古代都市テーベとその墓地遺跡」「アブシンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」を訪れることもできる。エジプトを訪ねたら4つ世界遺産はぜひ訪ねてほしい。カイロからは「アブ・メナ」「ワディ・エル・ヒタン(クジラの谷)」も訪問可能だ。

 

個人的にオススメしたいのは、シナイ半島からイスラエルやヨルダンに抜ける旅。ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の共通聖地である世界遺産「エルサレムの旧市街とその城壁群」や、ユダヤ教の聖地「マサダ」、映画『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』のハイライト「ペトラ」をはじめ、『旧約聖書』や『新訳聖書』にまつわるたくさんの遺跡がある。
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