ストレス/ストレスフリーの思考術

「○×思考」で苦しくなる人に必要な「長距離視点」(2ページ目)

「○×思考」は、心の病気にも結びつきやすい発想です。物事を○×の二分割で考えてしまうわけ、修正する方法をお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

「○×思考」は認知にゆがみがあるせい!? 

marubatu3

身近にあふれる○×的な言葉を書き出してみよう

この「○×思考」は、「認知のゆがみ」に関係しています。なぜか楽しく生きられない、人間関係を楽しめない、なんでもマイナスに考えてしまうという場合、自分自身の認知自体にあるゆがみが原因していることがあるのです。

うつ病など心の病の精神療法に「認知療法」という方法がありますが、この療法の大家であるバーンズは、「認知のゆがみ」を10種類に分類しました。「○×思考」はそのなかの、「全か無か思考」(オール・オア・ナッシング・シンキング)と共通します。物事を白黒、オール・オア・ナッシングの2つに分けようとする認知です。

とっさにとってしまう認知に「○×思考」の傾向がある場合には、世の中が不安定になり、“勝ち組”“負け組”などの○×的な言葉が現れたときに、容易に扇情されてしまいます。

認知のゆがみは、非合理的で非現実的な考え方です。たとえば、冒頭の「○○できない人は“負け組”」という発想をとってもみても、「そもそもなにを根拠にそう言えるのか?」と疑問だらけです。こんな根拠のない風評に振り回されて、自分や他人の価値を否定したり、抑うつ的になるまで追い込んだりするのは、ナンセンスです。

目の前の「結果」に注目せず、「長距離視点」で物事を見る 

marubatu4

結果しか見られないから「○×思考」になる

この「○×思考」がクセになってしまうのは、私たちを取り巻く環境が物事を「結果」ばかりで評価しているからなのかもしれません。

仕事をすれば、ほとんどがその成果でしか評価はされません。受験期の子や結婚適齢期の女性もそうです。家族からも、受験の合格・不合格の「結果」、未婚・既婚の「結果」でしか注目されないことが多いのではないでしょうか。

頑張って挑んだ姿、日々健気に生きている姿に、注目してくれる人は少ないのです。そんななかで生きていく私たち、そうした発想を持つ親に育てられた子どもたちが、自然に「○×思考」に傾いてしまうのも無理はありません。

しかし、やはり物事は○×で決まるわけではありません。今は×だと思える結果が、自分を生かす経験になることはたくさんあります。だからこそ、今見えている結果に注目するのではなく、「長距離視点」で物事を見ていこうという視点が大切になるのです。

根拠もないことに「○×思考」を働かせて評価してしまうと、自分や他人を追い込みすぎて、苦しくなってしまいます。そんな場合、意識して修正していきましょう。その都度、「それは根拠あるの?」「その考え方は合理的? 現実的?」と自分自身に問いかけていくことです。

こんな風に、気づいたときに修正を重ねていけば、「○×思考」から少しずつ離れていくことができると思います。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます