階別でみる採光・通風・プライバシーで有利な階
採光・通風・プライバシー面を「階別」に比較してみましょう(【図3】)。まず採光面ではバルコニー側に大きな建物があれば下階から影の面積が広がっていくため上階ほど条件がよくなり、反対に南側に大きな建物がなければ1~3階ではそれほど大きな違いはありません。
一方で、風通りには階数別でかなり違いがあります。1階よりも2階、2階よりも3階の方が、風の通り抜けがよくなります。これは上階になるほど建物回りの障害物が少なくなり風が抜けやすくなるためで、それぞれの階の外廊下を歩いてみると違いが実感できると思います。
窓を開けやすいのは上階
また、窓を開けやすい環境も下階よりも上階の方が整います。特に1階では、駐車場にくる人や道路を歩く人、ご近所の家と視線が合い、窓もカーテンも気持ち良く開けっぱなしにはしにくいでしょう。女性の下着なども安心して外に干せないかもしれません。反対に2階や3階になれば駐車場や道路の人と視線がずれるため、窓やカーテンはぐんと開けやすくなります。周りに大きな建物がなければ、3階以上なら目の前が開けて気持ち良く過ごせるでしょう。
足音等の騒音の影響は?
子どもの足音や、引き戸を開ける際の「ガラガラガラ…」という音など、上階の音は下階に響きます。ですから、静かな環境を望むなら最上階が望ましいでしょう。最上階ではない上階に住む場合、どのような家族が真上に住むかで受ける影響が変わってきます。最上階の一つ下の階の住戸であっても、すぐ真上の住戸に音を出す家族が住んでいれば気になるでしょうし、反対に1階に住んでいても、真上の住戸が大人だけの世帯であれば、最下階であっても上からの音はあまり聞こえないかもしれません。
1階なら下階への気兼ねもなく気楽に暮らせますが、上階に住めば下階への配慮が必要となり、どちらの方が良いかはケースバイケースといえそうです。
夏や冬の過ごしやすさは?
階別にみる季節ごとの過ごしやすさですが、夏は太陽が照りつける屋根に近い最上階が一番暑くなります。例えばガイドの住んでいたマンションでは、ある夏の日、エアコンなしで最上階の室温が一番高く30℃、その下の階では29℃、さらにその下の階では28℃・・・というふうに、ワンフロア下がるごとに1℃ずつ室温が低くなっていました。
反対に冬場は、床下からの冷気の影響で最下階である1階が一番冷えます。また、窓面の多い妻側住戸(101、201、301及び105、205、305号室)は窓が多い分、冷えやすくなります。従って、夏も冬も比較的過ごしやすいのは、今回の例では2階の中住戸(202、203、204号室)と考えてよいでしょう。
結論:どの住戸に人気が集まりやすいか
マンションはいろんな家族が入居する集合体であり、それがマンションライフの楽しさ、醍醐味でもあります。どんな人が隣や上下階に住むかによっても左右されるもの…という点では、やはり上下左右が隣人に囲まれる中住戸よりも、お隣が片側だけで、窓が多く、採光条件の良い妻側住戸の方が良い条件がそろっていると言えそうです。妻側住戸の中でもプライバシーや音の観点をプラスすると、メインエントランスからある程度離れた住戸や上階の方が条件がよいことから、今回のモデルケースでは、東南角部屋・最上階である305号室がもっと居住条件がよい(=人気がある)と言えるでしょう。
家族ごとに必要な条件を見極めて
もちろん家族構成により快適な住戸の位置はそれぞれです。子どもが小さいうちは階段の上り下りが少なく済み、外や駐車場に出やすく、下階への音の配慮も少なくて済む1階住居が住みやすいでしょう。一方、昼間は留守がちな大人世帯であれば、上階の中住戸が向くかもしれません。大きな特徴がない中住戸には、寒さ・暑さに影響を受けにくいという見えないメリットがあります。今回ご紹介した特徴を踏まえ、ご自身の家族にとって理想の住居の位置を検討してみてください。
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