メンタルヘルス/躁鬱病

多幸症とは……心の病気が原因で起こる多幸感

【医師が解説】多幸感が強く、躁状態が続く場合、いわゆる「多幸症」を疑う人もいるかもしれません。過剰な幸福感の原因には、双極性障害(躁うつ病)などの気分障害が隠れていることもあります。多幸感を生む心の病気の症状の特徴、チェック法、対処法を解説します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

多幸感の原因は心の病気? 不要なトラブルを招くことも

「多幸症」が過剰な多幸感の原因?

幸せを感じるのはよいことです。しかし過剰な「多幸感」は、日常生活にトラブルを起こすことも……。躁の可能性も疑ってみましょう

「多幸症」は、さまざまな心の病に関連してあらわれる症状です。

冴えない気分では、何をするのも面倒になりがちですし、反対に気分が良いときは、新しいことにチャレンジしたくなったり、毎日に張り合いを感じたりするでしょう。しかし、良い気分であっても、過剰な「多幸感」になると、不要なトラブルを招いてしまうこともあるのです。

例えば、何だか朝からとても気分がよく、勢いで気になっていた人に連絡でき、会う約束ができたとしましょう。ここまでならハッピーエンドも期待できますが、待ち合わせ場所に行くまでにも根拠なき幸福感が止まらず、後先を考えずに散財したり、余計な行動をしてケガをしてしまったりしては台無しです。

日常的に考えても、気分が良いからと、不必要な冗談ばかり言って人間関係を悪くしてしまったり、突然張り切った気持ちに満ち溢れて大言壮語を言ったり、突飛なことをしてしまったり、自分のキャパをはるかに超える仕事を抱えてしまったりしたらどうでしょう? 日常生活を大過無く送るには、やはり、「気分の良さ」や「幸福感」も適正範囲内にあることが望ましいのです。

今回は、多幸感に潜む心の問題について、詳しく解説致します。
 

多幸症の原因になる病気は? 根拠なき多幸感は、躁状態の疑いも

一般に、何か良いことがあった時や欲求が満たされた時に、良い気分になるのは当然です。こういう時こそ、「勝って兜の緒を締めよ」という名言を念頭に置きたいものですが、首尾良く物事が運んでいる最中は、自信過剰になりやすく、思いがけず大失敗してしまうことが普通の精神状態でもあります。

一方で、もしも特別良いことが起きた訳でもないのに、気分が普段よりずっと上がっているような場合、注意が必要です。気分とはつまるところ、脳内環境に影響されるものなので、この脳内環境に病的な要因がある場合に為に、多幸感が生じている可能性があるからです。
 

注意すべき多幸感……8つの症状チェック

脳内環境が病的になった為に多幸感が生じている場合、以下のような症状が現れやすくなります。
  • 何でも出来そうな気がするほど、自信過剰になる
  • アイディアが次から次に頭に湧いてくるが、脈絡を失いやすい
  • イライラが強く、物事に集中できない
  • 後先を考えずに行動しやすくなる
  • けんか、浪費、性的逸脱行為など、通常なら決してしない無謀な行動が目立ってくる
  • 衝動性が増している睡眠時間が普段より顕著に短くなっているが、特に眠気を感じない
  • 多弁になる
以上のような症状が、一定期間以上、特に1週間以上持続して、家庭や職場など、日常生活で問題が深刻化している場合には、躁の可能性があります。
 

多幸症の治療法……双極性障害(躁うつ病)などの可能性も

躁とは、ハイテンションで活動的な状態です。多幸感が躁になっている場合は、精神医学的には気分障害の1タイプとして、その「躁」のエピソードに入っている状態です。

具体的な診断名は、気分の振幅の有無や躁の程度により、それぞれの名になっていきますが、基本的には双極性障害です。躁うつ病とも呼ばれますが、それまでに「うつ」が無かった場合でも、時期を経て、抑うつ状態が出現する可能性があります。双極性障害については、「躁うつ病(双極性障害)の症状と原因…躁うつ病って何?」にて詳述していますので、興味のある方は是非ご覧ください。

いずれにしても、理由なく躁になるような状況は、脳内環境が神経生理学的に不安定になっています。躁の治療では、具体的にはリチウム製剤など、いわゆる気分安定剤と呼ばれるカテゴリーに属する治療薬によって、気分を適正範囲内に安定させる事が大事です。具体的な治療薬に関しては、気分安定剤の他に、抗精神病薬なども、個人個人の病状に応じて、その必要があれば使用されます。
 

多幸感・躁の可能性があれば精神科、神経科の受診を

多幸感が躁になっている場合、もし治療を受けなければ、日常生活上のトラブルがさらに深刻化していく可能性があります。しかし、本人は気分が良すぎて、自分の気分がトラブルの元になっているとはなかなか思い至らないものです。

躁症状はたとえ本人の自覚はなくとも、周りの目から見れば、問題があるのは明らかです。もしも家族や友人など、身近な人で躁の可能性が考えられる人がおられる場合は、精神科(または神経科)受診を勧めてみて下さい。当人の何が問題になっているか、当人自身はかなり認識し難い面があり、もし可能であれば、その問題点を治療する側によく伝えるためにも、本人と一緒に受診していただくことが理想的なので、どうかご考慮をお願いします。

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