ゲイと家族の関係を描き、感動を呼び起こしました

リプシンカ

 

ドラァグクイーンはゲイシーンから誕生したカルチャーであり、ドラァグクイーンと言えばゲイなので(ごくまれに女性の方などもいますが)、『デズモンド・グレイ』のクイーンたちだけでなく、オーナーである鈴木も当然、ゲイです。そしてもう1人、ある重要なキャラクターとしてゲイの男の子が登場します。『Lipsynca』は、その主要な登場人物の多くがゲイであるという、そういう意味でも貴重な舞台なのです。

世間一般の人たちが全員、こうした(派手に女装した)ゲイに対していきなり諸手を挙げて好意を示すということは考えにくいので、この芝居にも「ゲイに対する嫌悪感(ホモフォビア)」を表現するシーンが出てきます。中には「おかまのくせに!」という強烈なセリフも飛び出します…。でも、そんなひどいセリフを放つ人にもレッキとした理由があるということが、だんだん明らかになっていきます。

リプシンカ

 

オーナーの鈴木も、もう1人のゲイの男の子も、二人とも、ゲイであるがゆえに家族との関係が悪くなったという過去を持っています。鈴木はもういい年ですし、割り切った様子ですが、もう1人のゲイの男の子は、現在進行形で悩んでいます。後半、お店のパーティに向けたドタバタ劇の中で、そうした「ゲイとその家族の関係」の難しさが描き出されています。その中に「男が男を愛して、女が女を愛して、いったい何が悪いのよ!」というセリフがあり、観客の胸を打ちます。

このセリフには、長年、ゲイを白い目で見たり嘲笑したりいじめてきた世間の、その風当たりのつらさをいやというほど感じてきた人の心からの叫びが込められています。本当は自分だって家族にゲイであることを理解してほしい、ありのままの自分を受け容れてほしい…でもなかなかうまくいかないのです。

キホン華やかなドタバタ劇ですので、あまりシリアスな場面はなく、このセリフを言うシーンが「効く」というか、ズシンと観客に響く、そういう重みを与えられていたように感じました。このセリフこそが芝居の中でいちばん大事だとみんなが思っていたんじゃないでしょうか。そんな作り手側の「思い」が感じられて、後からジワジワきました。