じゅんとあさこの「お気に召すまま」

 

第56回 9月11日のこと

10年前、僕とダンナはつきあいはじめましたが、すぐにパレードのスタッフになって、気心知れた友達たちといっしょにその夏はパレードのためにすべてを捧げ、完全燃焼していました。9月11日の夜、僕はパレードグッズ(Tシャツとか)をたくさん買ってくれたショップの社長さんの事務所にグッズ担当者(友達)と出かけ、お話をしていました。その最中に、TVであの衝撃的な映像を観たのです…。

あれから世界は大きく変わりました。一介のゲイ雑誌編集者だった僕にさえ、9.11にまつわる事柄がいろいろ訪れました(たとえば、連載をお願いしていたNY在住の北丸雄二さんが、ユナイテッド93便の機内で勇敢にハイジャック犯と闘い、ホワイトハウス突入を阻止した英雄であるマーク・ビンガムがゲイの方だったという話を書いてくれました)

今年の9月11日はあれから10年という節目であると同時に、さらに3.11から半年という節目でもありました。しりあがり寿さんの「あの日からのマンガ」に表現されているように、あの日から、僕らの世界は再び大きく変わりました。まるで何事もなかったかのように街は動きはじめましたが、もうあの日以前には決して戻れないことに言葉にならない思いを抱きながら、僕らは生きています。

僕はふと、新宿で行われる脱原発デモを見に行こうと思い立ちました。ダンナも快く「行っておいで」と送り出してくれました。新宿の街を行く、数えきれないほどたくさんの人たちの長い長いパレード(友達にも何人も会いました)。乳母車を押しながら歩く家族の姿も目立ちました。アルタ前の集会では、いとうせいこうさん、雨宮処凛さん、柄谷行人さん、制服向上委員会といった有名人が次々に登場し、心揺さぶる音楽も奏でられ、まるでトーク&ライブイベントのように盛り上がりました。子どもたちが安心して暮らせる社会を!という呼びかけに、大きな拍手が寄せられました。ささやかな暮らしでもいい、この街で愛する家族と生きていきたい、という切実な願いが広場に満ちていました。

この日は全国各地でデモがあったそうです(あいかわらず報道されませんが…)。今度はパレードのように友達たちと歩いてみようかなと思いながら、家に帰りました。住む家があるということ、ダンナといっしょにご飯を食べれること…いつも通りの日曜の夜が、とても幸せに感じました。突然愛する人を失ったり、住み慣れた街を追われたり、そんな悲劇がこれ以上繰り返されないように…と祈りながら、眠りにつきました。