「イクメン」ブームはどこまで進む!?
「仕事、仕事」の夫がイクメンに変わるとき
厚生労働省では、2010年から「イクメンプロジェクト」を開始。オピニオンリーダーのトークイベントの開催や、男性の育児休業取得を促す環境づくりや啓蒙等の運動展開するなど、育児に前向きな男性を増やすための施策が積極的に行われています。
ガイドの周りでも、イクメンは着実に増加しています。私が幼い頃は、お父さんが保育園・幼稚園や学校関係の行事に顔を見せることすら恥ずかしいと思われていた時代でした。しかし、実際に今私が親になってみると、保育園の運動会の設営や催しにお父さんたちが大活躍したり、小学校ではお父さんたちのPTA組織「おやじの会」が工作教室を仕切るなど、単に「妻の代わり」的な育児ではなく、父親ならではの視点やネットワークを生かした自発的な育児を楽しむケースが増えてきています。
さらに、イクメンの「ファッション化」も進んでいます。主婦向けファッション誌『VERY』(光文社)では、バリバリ仕事をしながらも家庭を大事にし、ファッションにも手を抜かない男性を「イケダン」(イケてるダンナ)として紹介。イケメンであることがかっこいい、おしゃれだという意識改革のムーブメントも起こりつつあるようです。
イクメンの増加で家庭と社会のストレスが減るわけ
イクメンが増えることは、家庭や社会にとって次のようにたくさんの利点があります。1)夫婦の仲がよくなり、夫婦の団結感が高まる
育児は「分かち合う」から楽しくなる
育児の孤立化は、新たな問題も生んでいます。夫に頼れない妻が実家に依存することで、夫が育児から排除されて家庭が崩壊するケースも少なくありません。また、実家がそばにない妻がママ友との関係に依存することで、子どもの能力や生活水準のギャップを通じて心理的葛藤が強くなり、ますます孤独感を強くするケースも少なくありません。
一方、夫が家庭に目を向け、夫婦が協力して育児に積極的にかかわっている家庭は夫婦の関係が良好で、家庭の崩壊は生じにくいものです。育児は夫婦が苦労を分かち合い、小さなことでも話し合いながら進めていくことで初めて「楽しい」と感じられる活動です。夫が育児に関心を持ち、歩み寄ることによって、初めて夫婦の関係も円満になっていくのです。
2)夫婦のワーク・ライフ・バランスを考える機会になる
若い世代では、夫が毎日残業をして働かなければ、妻子を扶養できない家庭が非常に多いものです。しかし、妻だけの育児が大変なのと同じように、夫だけで家計を支えるのもまた大変なプレッシャーです。そこで、夫の労働を減らして育児に関わる時間を増やす一方で、妻が働けるライフタイルが定着すれば、夫婦は共にワーク・ライフ・バランスを実現することができます。
現在のイクメンブーム(特にイケダン)では、「仕事も手を抜かず、育児にも参加する男性こそカッコいい」、と職場と家庭での過労を奨励するような扇動が目立っているように思えます。しかし、それでは夫の負担が大きすぎ、いずれ燃え尽きてしまう男性が続出するでしょう。夫が仕事を減らして育児をする分、楽になった妻が働ける社会になれば、夫婦の不公平感はなくなり、仕事だけ、育児だけで煮詰まるストレスが避けられるのではないでしょうか。
3)結果的に子どもへの依存が減る
子どもが「自分で生きる力」を支えていくのが育児
夫婦が共に「子どもの自立」を念頭においた育児をしていれば、子どもへの依存など起こらないはず。子どもに依存してしまうのは、夫婦の関係が悪化しているために、子どもとの関係に気持ちのよりどころを求めてしまった結果です。
「育児熱心な父親は、子どもにプレッシャーを与えすぎて子どもをダメにする」という噂もあります。しかし、それは父親が子どもの自立を無視し、独善的な考え方で間違った育児をした結果ではないでしょうか。
子どもの心理発達や自立に関する正しい知識を身につけていけば、過保護や過干渉から子どもをダメにするリスクは減らせるはずです。
4)働きやすい社会、育てやすい社会に変わる
育児に熱心な父親が増えることで、育児支援関連の法制化が進むと、夫は雇用不安を感じることなく労働時間を減らし、育児に参加しやすくなります。これにより、夫のライフタイルは仕事一辺倒な生活から多面的な生活へと変わっていくため、人間関係や活動範囲が広がり、仕事のストレスを回避しやすくなるでしょう。
一方、妻の育児負担が減ると働ける時間が増えるため、保育所などの育児支援機関の設立がより進みやすくなります。妻は、仕事をすることで一時でも育児ストレスをかわすことができ、夫への経済的依存も減ります。すると、妻の自立心が促進されて夫婦の対等意識も高まり、家庭の消費活動も活発になって、社会全体が活性化していくでしょう。
このように、イクメンが増えることで夫婦のストレスが軽減するだけでなく、男女ともに働きやすい社会、子どもを育てやすい社会、経済活動が活性化する社会が実現しやすくなります。そのためにもイクメンブームを一過性のもので終わらせず、「社会を変えるためのファーストステージ」と位置づけて、社会全体で応援していきたいものです。