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免震マンションへの3つの疑問(2ページ目)

免震のメリットを「揺れをおさえる」から「地震力を低減する」と表現がかわりつつある。まだ歴史が浅く、その技術が正確に認知されていない現状をあらわす端的な例ではないか。ゴムが数十階ものRC造建物を支えている事実、何十年も性能が変わらない長寿命の耐久性。それらが実感しにくいといった声はいまだ根強い。いまこそ正しい知識を身につけるべきである。

坂根 康裕

執筆者:坂根 康裕

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「揺れ幅は小さくならない!?」免震装置の役割2:加速度を減衰させる

免震マンション「カトルズ代官山」

免震マンション「カトルズ代官山」

積層ゴムの最大のメリットである地震力を減衰して建物に伝えるしくみであるが、「揺れが小さくなる」と勘違いしているケースが多い。正確には「揺れの加速度が軽減される」のであって、場合によっては揺れ幅自体は免震建物のほうが大きくなるということもありうる。

また、震度1や2の地震では効果がないという噂も事実ではない。たしかに震度が大きくなるほど減衰効果を発揮するのであるが、たとえ小さな地震であっても免震装置は変形する。人間がその差を感じにくいだけなのだ。

テレビのインタビューで、免震ビルではたらく人に大きな揺れの様子をきいてるのを見たが、「船にのっているようなゆっくりとした横揺れだった」と証言していた。左右に大きく揺れるものの、加速度が軽減されているため、モノの落下や転倒はなく、人にケガや恐怖心を与えにくくする。これこそが免震のメリットである。

免震装置のメンテナンスは、定期点検と応急点検が行われている。応急点検は震度5弱の地震または風速30m以上の暴風後に実施されるよう、社団法人 日本免震構造協会の維持管理基準で定められている。

「建物は変位前の位置におさまるか」免震装置の役割3:元に戻る

免震装置(積層ゴム)

免震装置(積層ゴム)

免震建物には地震力を減衰させる免震装置と揺れ続けないためのダンバーが設置されている。が、はたして地震がおさまった後に積層ゴムはどこまで正確に元の形にもどるのか。つまり、建物の位置は微妙に変わったりしないのだろうか。

免震装置は、残留変位(地震や暴風で変形したままの状態になること)が50mm以内におさめるように設計されている。ちなみにブリヂストン社の調べでは、東日本大震災後、この残留変位は最大でも10mm以下におさまったそうだ。

余震が繰り返されたことによって、元に戻ろうとするゴムの性質がはたらく。万が一、想定を超える大きな残留変位がみられる場合はジャッキで元に戻すそうである。

免震建物は年間200~250棟が建設

日本橋undefined三越本店

日本橋 三越本店

まだ30年にも満たない免震技術であるが、10年、20年を経過した免震装置を一部抜きとって調査をしたり、実際の地震時におけるデータを記録するなどし、その成果や分析を実績として積み上げている。研究と普及が同時並行で進んでいるのだ。

既存の建物をリフォームする免震レトロフィットも注目を集める。三越本店では360基の免震装置を取り付けたそうだが、営業しながら耐震化が可能な点も評価されたようだ。

現在、免震建物は年間200~250棟のペースで増え続ける。これまでに3万基の免震装置を納品したブリヂストン社はすべての装置にシリアル番号で製造時とメンテナンスの情報を記録し保管している。

参考サイト 社団法人 日本免震構造協会

【取材協力】 ブリヂストン マルチラバーベアリング

【画像(2点とも)】 「桜プレイス」

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