通常の気分転換では回復できないとき、検討すべき精神科受診

大切な人に精神科受診してもらうために、大切なポイントは?
ストレスがたまってつらくなる日が増えてきたとしても、たいていの場合には、人に話を聞いてもらったり、おいしいものを食べたり、旅行に行って気分転換をしたりすれば、元気が戻るものです。
しかし、そんな工夫すらしたくない、したとしても一向によくならない場合には、心の病気を疑い、精神科での治療を始めた方がよい場合があります。たとえば、ほぼ1日中の憂うつ感や無気力、不眠やあせり、自責感などが2週間以上続く場合には、うつ病の可能性があるのかもしれません。人に見られているような感じ、人から非難されている声が聞こえる感じたしたり、思考がまとまらずに閉じこもりがちになる場合には、統合失調症の可能性があるのかもしれません。
早めに治療を始めれば、数カ月単位の早めの期間で回復できる可能性が高まります。早めに回復することで、以前と変わりない生活に戻れる可能性は高くなるのです。
症状が重くなるほど、病気と気づきにくくなる傾向も……
しかし、精神科の受診には、大きな抵抗感を持つ人も多いものです。一つには、まだまだ「精神科」に対するイメージや薬物治療に対して、偏見を持つ人が多いことがあげられます。また、精神科の病気の場合、一般的に病気が重くなるほど「自分は病気である」という病識が失われることも理由の一つです。つまり、周りが心配になるほど落ち込んでいたり、非現実的な思い込みに囚われたり、奇異な行動が増えてくるときほど、「自分は病気だ」と気づきにくいのです。そのため、周りが勧めても本人がなかなか受診を了承せず、症状が悪化してしまうケースも少なくありません。
しかし、たとえ病識はなくてもその状態を放置していたら、症状は進んでしまいます。最悪の場合には、死にたくなるほどつらくなってしまいます。そのため、見守りつつも受診を促していくことが必要になりますが、声のかけ方にはあるコツがあります。
「受診はあせらず、ゆとりを持つこと」が大切
治療が必要な段階なのに、受診の機会を先延ばしにしていると、症状は悪化してしまいます。そのため、心配な症状が増えてきたら、周りの人が早めに受診するように上手に勧める必要があります。いきなり「あなたは病気なんだから、早く病院へ行かなくちゃ」と言っても、その気にならないばかりか、逆に反発してしまうのではないでしょうか。そこで、段階的に自分の状況に直面化させる、という方法が有効です。つまり、「すぐに病院へ」と無理に誘うのではなく、少し猶予を置いて本人に受診への自己決定をさせることです。
受診に抵抗したときには、その意志をまず尊重しましょう。そして、たとえば「まず1ヶ月間様子を見てみようか。それでも状態が変わらなかったり、悪くなっていくように感じたら、そのときには改めて受診を考えてみない?」というように提案してみてはどうでしょう。また同時に、「症状に合う薬を飲めば、きっと今より状態はよくなる」「早く治療すれば、早く回復する」というように、受診によって今より楽になることを啓発しておくことも大切です。
本人はとてもつらいわけですから、症状が長引けば、受診に前向きになっていくはずです。大切なのは、本人に受診への意欲を持たせること。そのためには、あせらずに段階的に受診を考えるためのゆとりを用意することが大切です。