起業・会社設立のノウハウ/起業・独立資金を得る

起業1年目を乗り切る資金繰りのノウハウ(2ページ目)

起業してから経営が安定するまでの最大の難所は、起業1年目を資金不足にならずに乗り切れるかどうかです。安定した売上入金が確保できるまでの間も様々な支出は発生します。また、経験不足から資金繰りの予測を見誤り、思わぬ出費に対応できないケースもあります。そうならないためには、あらかじめ正しい情報を把握し、万全の準備をしておくことが重要です。起業1年目を乗り切るための資金繰りのノウハウを公開します。

中野 裕哲

執筆者:中野 裕哲

起業・独立のノウハウガイド

取引条件を慎重に検討する

取引条件は資金繰りも考慮して慎重に検討しよう

取引条件は資金繰りも考慮して慎重に検討しよう

資金不足にならないためには、起業当初から資金繰りが楽になるような取引条件を取引先との間で設定しておくことも有効です。

1.回収条件
業種によっては回収条件の検討により、売上代金の回収のタイミングを有利に調整することが可能です。

例えば、

  • 仕事が終わって、何日締めで請求書を発行するか
  • 支払期日は何日にするか
  • 前払いしてもらえる可能性はないか
  • 一般消費者が取引対象の場合、回収は口座振込か口座振替かクレジットカード払いか代引きか(それぞれ実際に入金されるまでの期間はどのくらいか)など

資金繰りが少しでも楽になるように熟慮して回収条件を決定しましょう。起業当初に決めた回収条件をあとで変更するのは難しいということを意識してください。継続的な取引先の場合、一度決めた回収条件を変更することは相手先の資金繰りにも影響を与え、信用にも関わるからです。

また、取引先企業によってはあらかじめ社内で取引条件が決まっている場合があります。その場合、相手の取引条件に合わせる必要があるため、最初によく確認しておきましょう。特に注意したいのが手形払いやファクタリング払いが絡むケース。手形払いやファクタリング払いになる取引金額、支払サイト(現金化までの期間)、手形集金のタイミング、割引が可能かどうかなどを事前によく確認しておきたいところです。また、現金払いへの変更を交渉する余地があるかどうかも検討してみましょう。

2.支払条件
仕入れや経費などの支払条件も、あらかじめ社内で決めておくと資金繰り上、有利となります。基本的に取引先の支払条件が決まっていれば、それに合わせることになりますが、交渉の余地がある場合は交渉を検討しましょう。特に、検討が必要なのが、起業当初に内装工事やシステム開発など、多額の設備投資が必要なケース。前払部分を減らし、完成、納入してから支払う契約条件にしてもらうことで資金繰りが楽になります。

人件費に注意 

通常、起業して間もない頃は、余分な人員を抱えておくほどの余裕はありません。起業当初で売上が安定しないうちでも毎月支出が続く人件費は、資金繰り上大きな負担となるからです。本当に必要な人員なのか、人員配置でカバーできないかなど、熟慮してから採用活動を開始しましょう。経営者本人がプレイングマネージャーとして自ら担当すること、正社員がすべきこと、アルバイトがすべきこと、繁忙期のみ派遣社員を雇用してまかなえること、外部にアウトソーシングできることなど、業務内容ごとによく検討し総額人件費の抑制に努めるべきです。

また、社員の待遇についても熟慮が必要です。固定給を抑え、成果に応じて支払う部分を多くする、残業代を抑える勤務態勢を構築するなど、給与が会社の負担にならない仕組みを検討しましょう。

社会保険料にも注意

人件費とともに注意しておきたいのが社会保険料。多くの起業家が起業1年目の社会保険料に負担感を感じています。給与金額を設定する際には、社会保険料の負担も考慮して決定するように注意してください。社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)と労働保険料(労災保険料、雇用保険料)の合計で給与金額に対し約13%の負担が生じます。

従業員の給与だけでなく役員報酬額の設定にも社会保険料は関係してきます。起業1年目から役員報酬額を多めに設定してしまうと、それに比例して社会保険料の負担も増える点にご注意ください。

いざというときの備えもしておく

ここまで見てきたように、起業1年目は資金不足になりがちです。あらかじめ対策をしておくとともに、どのような緊急事態が起こっても対処できるようにしておくのが堅実な経営のやり方。オススメなのは、会社設立時に手持ちの資金をギリギリ一杯まで資本金として出資せず、ある程度は手持ちの個人資産として残しておく方法です。いざという時のために資金的に余裕をもたせておけば、起業1年目も安心して経営することが可能となります。
 


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