東京圏の住宅地が都心20キロ~30キロ圏内に縮小する理由
その2:40キロ圏以遠の郊外は空家化が進む
人口の減少に加え、2つ目の理由は産業構造の変化です。1987年から始まり、1990年代初頭に崩壊したバブル時に70キロ圏まで拡大した郊外の住宅地には、現在、空家の増加が顕著です。特に40キロ圏から70キロ遠で顕著となり、平成20年には60~70キロ圏で空家率が15パーセントに達しようとしています。空家は第二次産業の工場のあった地域に多く発生しています。これは近年の地方や海外へ工場が移転し、第二次産業が衰退し、そこで働く人がいなくなり、住んでいた周辺の住宅が空家になるからです。
就業者数が多い第三次産業は、郊外よりも都市部に集成している
第二次産業に変わって、就業人口が伸びているのは、第三次産業です。なかでも就業者数が多いのは「卸売・小売業」、増加率が高いのは「労働者派遣業」「社会保険・社会福祉・介護事業」「寮術業」「情報処理・提供サービス業」です。こうした産業は、人が集まる大都市の、しかも都心部に集積しやすいため、就業人口は郊外から雇用力のある都心部へ移動します。特に情報処理・提供サービス業を含む「情報通信業」の就業者数は全国1位が東京都です。また、1980年=100としたときの産業別GDPの変化の割合をみていくと、一番成長率が高いのは、金融・保険業で1980年から20年でGDPは2倍になったのに対して鉱業のGDPは4分の1です。当然ですが、金融・保険業の中心は東京都心部です。
就業者のなかでも、若者ほど雇用力があり高年収が得られる地域に移動するので、今後はより都心に立地する業種に若者が集中し、仕事場に近接した都心に住まいを求めます。半面、郊外へ仕事や住まいを求めて移り住んでくる人は減少するのです。したがって、将来にわたり、都心へ人口は集中し続けることが予想されるのです。
3つ目の理由は、次回「少子高齢化で変わる住宅地図(中編)」でご説明します。
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