雇い止めも解雇と同様な留意点がある
トラブルになった場合は、どういう判断が下るのでしょうか。有期労働契約が、期間の定めのない契約と実質的に変わらない状態になっている場合や反復更新の実態、契約締結時の経緯等の状況で、雇用継続への合理的期待が認められる場合は、解雇と同様な手続きを踏むべきという判断が下る場合があります。裁判になった場合には、正社員と同じような就業状況にあったかどうかが判断基準になります。以下で非常に参考になる裁判例をご紹介します。<裁判例>
1.何度も契約更新して長期間契約している場合
期間が終了するごとに当然更新を重ねていて、期間の定めのない契約と実質的に変わらない状態で労働契約が存在していたといわなければならない場合、雇止めの意思表示は実質において解雇の意思表示にあたる。雇止めの効力の判断に当たっては、解雇と同様に判断するべきである。(最高裁第一小法廷 昭和49年7月22日判決)
2.5回契約更新していた場合
期間の定めのない契約と実質的に変わらない状況ではないが、季節的労務や臨時的労務ではなく、雇用関係はある程度の継続が期待されていたもの、5回にわたり契約が更新されていた場合、このような労働者を契約期間満了によって雇止めするに当たっては、解雇と同様に判断される。(最高裁第一小法廷 昭和61年12月4日判決)
裁判例を見ると、雇い止めといっても、解雇と同様の取り扱いをしていかなければならない場合があることが分ります。実務を行う上での判断基準のよりどころになります。
雇い止めに関するトラブル防止対策
厚生労働省による基準を把握してトラブル防止に努めよう
厚生労働省から、トラブルを予防するために活用できる基準「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」が策定されています。この基準どおりに措置をしたからといって完全にトラブルゼロになるとは言えませんが、予防対策上非常に参考になる基準です。以下ご紹介します。
「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の主な内容(厚生労働省)
- 使用者は、有期労働契約の締結に際し、更新の有無や更新の判断基準を明示しなければなりません。
- 有期労働契約が3回以上更新されているか、1年を超えて継続勤務している有期契約労働者について、有期労働契約を更新しない場合には、少なくとも30日前までに予告をしなければなりません。
- 雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求したときには、遅滞なく証明書を交付しなければなりません。
- 有期労働契約が1回以上更新され、かつ、1年を超えて継続勤務している有期契約労働者について、有期労働契約を更新しようとする場合には、契約の実態及び労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません。
上記基準に挙がっている様なプロセスを踏むことで、トラブルを未然に防いでいくのです。良好な労使関係は、こうしたことの徹底にあります。この基準を具体的にどのように実務上実行していくのかは、下記のリンクで確認することができます。モデル労働条件通知書も紹介されていますので、積極的な活用をお勧めします。
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<関連資料>
有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準
「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」は労働基準法に基づく厚生労働大臣の告示であり、雇止めの手続等について定めています。罰則はありませんが、労働基準監督署において遵守のための指導が行われます。