究極の美しさとリアリティに挑む! 4K2Kはテレビの正常進化
テレビの新しい動きの一つが4K2K(QFHD:Quad Full High Definition)テレビです。「それって何ができるの? 例えば映像で会話ができるとか?」
いえ、4K2Kテレビにはそうした流行の機能はありません。ひとえに映像が美しいテレビです。
現在のテレビの主流が画面解像度1920(水平)×1080(垂直)のフルハイビジョンであることはご存知と思います。簡単にいうと、4K2Kテレビとは、タテヨコの解像度(画素)がフルHD(FHD)のそれぞれ2倍、全体で4倍(Quad)の画素数、つまり情報量を持つテレビです。
実はこの4K2Kって、映画の撮影に使われるデジタルカメラが採用する撮像素子のスペックなのです。その代表が最近急激に使用実績を伸ばしている“RED”カメラで、例えば近作では、『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』、『ウィンターズ・ボーン』といった作品がREDカメラで撮影されています。
途中でさまざまな編集プロセスがあるにしても、最終的に家庭でそれを表示するディスプレイのスペックと原画のそれが一致していることで、どれだけ作品本来の映像の狙いが伝わるか、それについて説明の必要はないでしょう。
4K2Kに一番乗りした東芝「レグザ 55X3」
国内で初めて4K2Kパネル(829万画素)を搭載した製品が東芝レグザ55X3です。といっても、現時点でQFHDの市販映像ソフトがないので、もっぱら超解像技術でFHD映像(1920×1080)をQFHD(3840×2160)にアップコンバートして表示します。同時に、4倍相当画素とレンチキュラーシートのフィルター効果で「大画面裸眼3D」を実現しました。REGZA 55X3 [55インチ]
私も実際にフルハイビジョンのブルーレイディスクをQFHDにアップスケールした映像を見ましたが、まことに見事な映像でした。
私が持参したミュージカル映画『ロシュフォールの恋人たち』(1966年仏)でしたが、映画の後半、フランソワーズ・ドルレアックとカトリーヌ・ドヌーヴ扮する双子の姉妹が港町のアトラクションの舞台で歌い踊る、自然光主体で撮影されたシーンがあります。
二人の女優の動きにつれて顔が明るんだり天蓋の影で暗くなったりする、明るさと陰影の変化が恐ろしく生々しいのです。QFHDの画素密度と精密なフォーカス、自然なエッジ表現があってこそこの繊細緻密な階調が生まれたといってよく、まさにフィルムの光と階調がそこにありました。
55インチというサイズは別段大画面でありませんが、それを忘れさせて「テレビ」が姿を消し、「映画」そのものがそこにあったといっても過言でありません。
パナソニックは至難の20Vの小型画面で4K2Kを実現!
4K2Kで東芝を追う一番手がパナソニックです。今年1月10日に本拠地の大阪府茨木市でプラズマ/液晶方式新製品の他に、20V型IPS方式4K2Kパネルを公開しました。総画素数3840×2160、画面サイズ20.4インチで厚さ3.5mm、輝度450CD/平方メートル、色再現性は70%というパネル。1インチ当り216画素(216ppi)という精細度、3.5mmの薄さ共に現時点で世界最高で、これを実現したのが「超高開口率画素構造」と「新液晶配向プロセス技術」です。
前者の採用でパネル透過率を従来比2倍に高めたことで、バックライトの明るさを有効利用。世界最薄3.5mmと4K2Kを達成しました。同時に後者の「新液晶配向プロセス技術」の採用で斜め方向の視野比角を改善しました。
デモ機は静止画で視力診断表、道路地図、顔のコラージュ、ヒマワリ、N.Y.のビル街、パリの夜景、を表示していましたが、フルハイビジョンの場合20V型では読めなくなってしまう地図上の細かな街路名の書き込みがはっきり読み取れ、N.Y.のビル街は窓の中の室内が覗けてみえる精細度で目を凝らしていたギャラリーから次々に歓声が上がっていました。
一度知ったら戻れない!4K2Kの映像美
東芝、パナソニック以外の全社が4K2Kテレビの仕込みを行っていますが、商品化のスピードはゆったりしたものになるでしょう。なぜなら、放送を含めて4K2Kの映像(動画)ソフトが流通していないからです。しかし、いったん、4K2Kの映像を知った人は、フルハイビジョンに戻れなくなるのは事実。4K2Kにはそれだけの説得力、FHDで味わえなかったリアリズムがあるのです。テレビの語源はTele(遠くを)Vision(見る)ことにあります。4K2Kはテレビの正常進化そのもの。だから、気長に期待しましょう。
次は、ソニーの新しい技術「クリスタルLED」です。