テレビは白黒からカラーへ、アナログからデジタルへ、フルHDから4Kへと進化してきました。そして今、注目したいのが2015年秋にブレークしそうな「HDR」(High Dynamic Range/ハイダイナミックレンジ)です。薄型テレビの画質は、いよいよ感動のステージへ!

オーディオ・ビジュアル評論家の筆者鴻池が、ここ数年で最も注目する「HDR」について、基礎知識から製品の選び方まで解説します。

テレビの「HDR」とは?

デジカメ写真では既に「HDR」機能が人気です、スマートフォンなどでも利用でき、日常的に活用されている方も多いでしょう。これは、日陰のように暗くて黒潰れする部分と、空のように明るく白飛びする部分をそれぞれ適正な露出で撮影し、一枚の写真に合成する技術です。結果、人間が見た印象に近い映像を残せるのがメリットです。

一方、テレビの「HDR」は似て非なるもの。

普段肉眼で見る光景は、明暗差に富んでいます。例えば太陽、炎、照明など、自ら発光する光源と、それらに照らされる物体は、誰もが違いを感じることでしょう。また、照らされる物体も様々で、特に光沢のある金属やガラスの質感は、「光」が鍵と言えます。

ところが、現在の薄型テレビは、自然界の存在する“輝度差”をそのまま表現することが出来ず、例えば、非常に明るい太陽も、建物の白い壁も同じ明るさで映し出されているのが実情です。これが“リアリティー”を損なっている一因なのです。
そこで明暗差を拡大し、“リアリティー”を追求するのが、テレビの「HDR」機能という訳です。近年、液晶テレビのバックライトとして高輝度なLEDが採用できるようになったことで、実現が可能になりました。

■HDR効果例 その1: 明るい映像の場合

従来のテレビが〈写真左〉とすると、右がHDR効果のイメージ。

空や雲に太陽の眩しさ、波頭にキラキラとした輝きが加わり、テレビを見ているというよりも、その場にいるような感覚に。

HDR効果のイメージ。

HDR効果のイメージ。眩しさや輝きが表現可能に。


■HDR効果例 その2: 夜景のような映像の場合
従来のテレビが写真左とすると、右がHDR効果のイメージ。

暗闇に浮かぶライトの煌めきが表現され、夜景を肉眼で見た際に感じる"美しさ"に近づくことができます。「コントラスト」は心を揺さぶり、感動に繋がる重要な要素なのです。

HDR効果のイメージ。

HDR効果のイメージ。ライトの煌めきが感じられる。


真正HDRと復元型HDR

HDRの真価を100%引き出すには、コンテンツもテレビも「HDR」規格に対応している必要があります。ここでは真正HDRと呼ぶことにしましょう。

アメリカでは既にインターネット動画配信大手の「Netflix」が4K解像度のHDR制作コンテンツを供給していて、一部の対応テレビでHDR視聴が可能です。

日本では、HDRコンテンツの供給に関する公式発表は未だがありませんが、2015年秋に登場が見込まれる4K解像度のプルーレイ(UHD Blu-ray)や、「Netflix」のような動画配信サービスを契機に広まりそうです。

では、現在のテレビ放送やブルーレイのような非HDR映像は、HDR画質で楽しめないのでしょうか?答えは”ノー”と言ってよいでしょう。

既存の映像コンテンツは、ダイナミックレンジを圧縮した状態で供給されています。よって、テレビ側である程度の復元は可能で、そうした機能を搭載したテレビが増えています。

ただし、ダイナミックレンジの復元は、あくまでも“予測に基づく拡張”で、製品や画柄によっては不自然に見えてしまうケースももあります。ここでは復元型HDRと呼び、真正HDRと区別しておきたいと思います。

今後ですが、コンテンツのHDR対応が理想なものの、当面は、地上デジタル放送や現行ブルーレイのような非HDR映像が主流と考えられます。真正HDR対応テレビが持つ画質性能を活かす意味でも、復元型HDR技術のさらなる進化に期待したいものです。


「HDR対応」テレビの選び方

「HDR」は、テレビの画質を大幅に向上させる仕組みとして、歴史的な出来事と言っても良いでしょう。しかし、「HDR対応」テレビだからと言って、全てが高画質とは限りません。最終的には、それぞれの製品の実力によります。
では、どのような性能や機能に注目すべきでしょうか?要素別に見て行きましょう。

【HDR入力対応】
HDR規格の映像をHDMIで伝送するには、機器が新規格「HDMI 2.0a」に対応している必要があります。
もちろん、テレビには、HDR信号を処理する機能が必要です。

【高輝度・高コントラスト】
HDRの真価を体感するには、「HDMI 2.0a」やHDR信号の処理などの機能に加え、表示性能自体が「ハイダイナミックレンジ」であることが重要です。
スペックとしては「高輝度」や「高コントラスト」がキーワードとなるでしょう。


製品紹介

HDRの高画質が体感できる、お薦めの新製品をご紹介しましょう。

■ソニー BRAVIA KJ-75X9400C
ソフトウェアアップデートによるHDR対応を予定。分割駆動が可能な直下型LEDバックライトを備え、独自のX-Tended Dynamic Range PRO(エクステンディッド ダイナミックレンジ プロ)機能により、明暗差のダイナミックな映像美を実現しています。


■東芝 REGZA Z10Xシリーズ
65型、58型、50型をラインナップ。2015年12月、ソフトウェアアップデートによるHDR対応を予定。分割駆動が可能な直下型LEDバックライトを備えた高コントラスト性能も魅力です。


■シャープ AQUOS LC-80XU30
HDR規格への対応は未定ながら、独自の技術で現在の放送映像やブルーレイの映像をナチュラルにHDR復元。8K相当の解像度を持つ80型の超大画面映像とHDR復元機能の相乗効果で、臨場感の高さが魅力です。


さいごに

HDRが登場した背景には、4Kや8Kといった高精細化によって臨場感を追求する大きな流れが根底にありますが、薄型テレビの表示性能アップも要因と言えます。
2015年秋には、より高輝度な表示性能を備えた、HDR対応の新製品も登場するでしょう。

将来的には、自発光でピクセル毎に輝度のダイナミックなコントロールが可能な有機ELテレビが普及すると、HDR映像を更に美しく映し出される時代がやって来そうです。そうなれば、画質なんて分からない……という方も、HDRの感動画質に気付くはず。

テレビは、便利機能や低価格に注目が集まりがちですが、再び「高画質」がキーワードとになる時代がやってきそうです!

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