テレビ/テレビの選び方

話題の「有機ELテレビ」とは? 液晶との違いを解説

超高画質が話題の有機LEテレビ。2017年は参入メーカーが増えて「有機ELテレビ元年」になりそうです。今回は、有機ELテレビの基本、液晶との違い、メリットやデメリットをご紹介します。今年買うなら有機ELが本命?

鴻池 賢三

執筆者:鴻池 賢三

オーディオ・ビジュアルガイド

一口に薄型テレビといっても、映像の表示方法にはいくつかの方式があります。家庭用のテレビとして製品化されているのは、「プラズマ」、「液晶」(LCD)、「有機EL」(OLED)の3種類です。

プラズマは大画面薄型テレビの元祖と言えますが、その後、液晶パネルの大型化と低コスト化が飛躍的に進み、液晶テレビが多勢を占めるようになりました。さらに、液晶は高精細化の方向でも技術が進展。4K時代の到来とともにプラズマは姿を消し、液晶が主流となって現在に至っています。

こうした流れを振り返ると、「有機ELテレビ」は、第3の薄型テレビと呼んで良いでしょう。

今回は、有機ELテレビの仕組みや特長から、ピッタリのユーザー像や用途例をご紹介します。


テレビの表示方式とそれぞれの特長

プラズマ、液晶、有機ELの構造

プラズマ、液晶、有機ELの構造

現在主流の液晶方式は、カラーフィルターをバックライトで照らし、見せたい部分の液晶シャッターを開いて明るく見せることで映像を表現しています。

一般的なテレビはRGBの加法混色によってフルカラーを再現しますが、閉じたはずの液晶シャッターも、隙間からバックライトの光が漏れてしまうため、色が薄くなったり、黒であるべき部分が薄明るく表示されてコントラストが低下してしまいます。そのほかにも、液晶のシャッター構造が、視野角の制限を生んで上下左右から見ると色味やコントラストが変化したり、反応の遅延による残像現象など、原理的な問題を抱えています。

もちろん、液晶が悪いという訳ではありません。ブラウン管テレビ時代には考えられなかった大画面を、誰もが手に入れられる価格で実現した功績は大きく、現実解として重要と言えます。

対する「有機EL」は、RGBのサブピクセルが独立して光る「自発光」が特長です。大別して、R(赤)、G(緑)、B(緑)、それぞれの色を発光する素材を用いる「三色タイプ」と、RGBのカラーフィルターを用い、サブピクセルに割り当てた白色発光の有機EL素材で照らし出す「白色+フィルタータイプ」の2種類があります。

どちらも「自発光」ならではの特長を備え、例えば、サブピクセル単位で発光をコントロールできるので、液晶に比べ、色の純度やコントラストを高めることができます。ほか、視野角特性に優れ、また、素子自体は応答性能が非常に素早いので、残像を少なくすることが可能です(製品によって差異があります)。


画質の違いをイメージで確認

百聞は一見に如かず。液晶と有機ELの違いを、画像イメージでご紹介しましょう。例えば「夜景」。誰もが美しいと感じる典型的な画柄ですが、これは黒を背景に、ライトなどの光源がキラキラと輝き、高いコントラストを感じられるためです。

液晶の場合、暗部がバックライトの光漏れで薄明るくなるため、コントラストが弱くなりがちですが、その点、自発光の有機ELは、真っ黒に近い表現も可能で、肉眼で実際の風景を見るような、コントラストの高い映像美を楽しむことができます。
液晶と有機ELの見え方違い

液晶と有機ELの見え方違い(イメージ)


【液晶のイメージ解説】
黒であるべき部分は薄明るく、コントラストが低下。暗い海の奥行き感も掴みづらく、中州の有無も見分けづらい。

【有機ELのイメージ解説】
真っ黒に近い表現が可能で、橋を照らす照明や、ビルの窓灯りの煌めきが引き立つ。暗い海面の様子や中州の存在も手に取るように分かり、映像全体としても立体感が高い。


なぜ今、「有機ELテレビ」なのか?

有機EL自体は高画質で超薄型化に向いた技術として知られ、新しいものではありません。世界初の有機ELテレビは、ソニーが2007年に発売した「XEL-1」で、現在も小画面の有機ELパネルは、ゲーム機、スマートフォンなどで採用されるケースがあり、既に手にしている読者もいるかもしれません。

では、なぜ今「有機ELテレビ」なのでしょうか? それは、50インチを超える画面サイズ、4K解像度、明るさ、寿命、コストなど、家庭用のテレビとして必要とされる水準にようやく到達したからです。

先陣を切ったのはLG。グループ内で有機ELパネルの開発と生産を行い、日本でもLGブランドのテレビをいち早く発売しました。当初は高価でしたが、技術の向上と生産規模の拡大などにより、今では有機ELテレビが、高級タイプの液晶テレビと肩を並べるまでに価格が落ち着いています。

LGは有機ELパネルの外販も行い、東芝、パナソニック、ソニーといった日系メーカーが採用。2017年に家庭用有機ELテレビが続々と登場する状況に至りました。

【製品例】
・LG OLED55E6P(発売中)

日本で発売されている55型/65型平面モデルの中で最上位の「E」シリーズ。3D映像の表示に対応し、高音質スピーカーシステムを搭載。


・LG OLED55B6P(発売中)

より身近な価格が魅力のスタンダードモデル。上位の「E」に対し、3D表示非対応でスピーカーもシンプル。


・東芝 REGZA 55X910(2017年3月発売予定)

【設置+リサイクル+長期保証】東芝 55X910 REGZA(レグザ) X910シリーズ 4K有機ELテレビ 55V型 HDR対応
 
独自の映像処理アルゴリズムと高度な半導体技術により、REGZAならではの高画質を実現。


・パナソニック EZ1000(ニュース)
「パナソニック、次世代有機ELテレビ「EZ1000」正式発表」-Phileweb


・ソニー BRAVIA A1E シリーズ(ニュース)
「ソニー、4K有機ELテレビ「A1E」シリーズ」-Phileweb


同じパネルで映像は違うのか?

現在発売中あるいは発売予定の家庭用有機ELテレビは、すべてLGの有機ELパネルを採用しています。ここで気になるのが画質の差。同じ有機ELパネルなら、どのメーカーが製品化しても、同じ画質になるのでしょうか?

答えは「ノー」。料理に例えると、パネルは素材で、料理人のセンスや腕が、最終的な味(画質)を大きく左右します。日本のテレビメーカーは、それぞれがフィロソフィー(哲学)を持ち、高度な高画質化技術を蓄積してきた経緯があり、少なからず違いが生じるのは明らかです。

同じパネルならば、各社の考え方や技術力がより明確に現れるはずで、マニアにとっては、比較も楽しめそうです。


有機ELテレビは買いか?

今、有機ELと液晶を比較すると、有機ELは画質に優れ、超薄型の格好良さも魅力です。デメリットは、比較的高価で、画面サイズを含め、製品の選択肢が少ないことです。

一方、液晶は、家庭用テレビとして長い歴史があり、絶対的な明るさ、価格や画面サイズを含めて自在に選べる製品の豊富さなど、まだまだ魅力は多いものです。

照明を充分暗くして映像美を優先するなら「有機EL」を、日中、直射日光が差し込むような明るいリビングなので明るく鮮明な映像を得たいなら「液晶」を選ぶと良いでしょう。

今後ですが、有機ELは構造がシンプルなため、壁に貼り付けるような超薄型や、さらなる低価格化が期待できます。一方の液晶も技術開発が進んでいて、現行の有機ELを超えるコントラスト性能も視野に入ってきました。

技術は日進月歩、今後もテレビから目が離せなさそうです。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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