免震構造の最新技術
建築技術は常に改良を試みる。免震も同様である。そこで最新動向をひとつ紹介しよう。前ページでは、免震に適さない条件のひとつに、細長い形状の建物をとりあげた。その根拠は、大地震時では免震装置に「引き抜き力」が加わり、その対処に相当なコストがかかるためである。そこで、課題を克服するために開発されたのが、鹿島建設の「ウインカー工法」だ。
ウインカー工法とは、積層ゴム支承を鋼製のウイングプレートを介して基礎に固定する据付工法である(右上の画像参照)。免震装置の変形(あるいは建物の移動によっておこる引き抜き力)によって生じる引張力をウィングプレートが吸収するため、積層ゴムへのダメージを軽減する効果がある。コストも低くおさえられる新しい手法である。
ウインカー工法は、「キャピタルマークタワー(港区芝浦)」「ジェントルエア神宮前(渋谷区神宮前)」「目白ガーデンヒルズ(豊島区目白)」などの都心のマンションですでに採用実績がある。
免震マンションと長周期地震動
最後に、昨年末に国土交通省が意見募集を始めた「長周期地震動の対策」について説明しておきたい。長周期地震動とは、周期の長い人間が感じないほどのゆっくりとした大きな揺れのこと。震源地から数百キロ離れた都心のビルのエレベーターが実際に損傷し、都市部における高層化の新たな課題として、いま関心が寄せられているテーマである。問題は、周期の大きな揺れが、タワーマンションやオフィスビルなどの超高層建築物や免震構造の建物の固有振動(物体を自由に振動させた場合の特定の振動)と一致し、家具やモノが飛び交うような甚大な被害につながる恐れがあることだ。
国土交通省の資料によれば、長周期地震動の対策が必要とされる条件として、「エリア」と「固有振動」を挙げている。まずは、地盤に大きく影響を受ける長周期地震動の、対策を要する対象エリアに入っているかどうかを知ること。さらに、基準値を上回る固有振動域に実際の(あるいは建設中の)建物がかかっているかどうかをチェックする必要があるとしている。
免震構造のマンションを知る<前編>
【取材協力】
鹿島建設
【関連サイト】
タワーマンションの「長周期地震動」対策
好立地の免震マンションを10棟ピックアップ
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