マーケティング/マーケティング事例

食べるラー油から学ぶPLCに応じたマーケティング戦略

2011年3月7日、エスビー食品は新たな食べるラー油4種類を投入して、市場のテコ入れを図ってきました。昨年ブームの絶頂を迎えた食べるラー油市場。成熟期を迎えた現在、プロダクトライフサイクル(PLC)の観点から適切なマーケティング戦略を検証していきます。

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

プロダクトライフサイクル(PLC)に応じたマーケティング戦略が売上を極大化させる!

2010年、数々のヒット商品番付で1位に輝くなど爆発的なヒットを記録した食べるラー油。最近では常時スーパーの棚に陳列されるなどブームは沈静化しつつあります。

多くの商品やサービスは、人と同じように生まれ、成長し、成熟して、衰退していくプロダクトライフサイクル(PLC)と呼ばれる寿命があります。このプロダクトライフサイクルに基づけば食べるラー油は売上が急成長する成長期を過ぎて、落ち着いてくる成熟期を迎えたということができるでしょう。製品の寿命は人と同じ。個々の商品やサービスで変わってきますが、プロダクトライフサイクルに応じた適切なマーケティング戦略を実施することにより、製品の寿命を延ばすこともできます。

今回は食べるラー油を事例に、プロダクトライフサイクルを伸ばし売上を極大化させるマーケティング戦略についてお伝えしていくことにしましょう。

導入期は認知度の向上が鍵を握る! 

プロダクトライフサイクルに応じたマーケティング戦略

導入期は認知度を高めるプロモーション戦略を考えよう!

具入りラー油自体は以前から存在しましたが、新たなカテゴリーとして食べるラー油が登場したのが2009年8月。桃屋が『辛そうで辛くない少し辛いラー油』を市場に投入したのを機にマーケットが誕生します。この食べるラー油は、発売当初から流行に敏感なオピニオンリーダーに受け入れられ、インターネットなどを通した口コミで静かなブームが巻き起こります。

マーケティング戦略において、新製品を投入して初期、すなわちプロダクトライフサイクルの導入期では、いかに新製品の認知度を上げていくかというプロモーション戦略が重要な鍵を握ります。このセオリーを踏まえて、桃屋は発売後ほどなくして『辛そうで辛くない少し辛いラー油』の認知度を高めるために、人気ロックバンド「怒髪天」の増子直純さんを起用したテレビCMなどのプロモーションに力を入れていきます。

このプロモーションが消費者の注目を浴び、『辛そうで辛くない少し辛いラー油』は爆発的な売上を記録。これ以上の過熱を避けようとテレビCMを中止する事態にまで発展することになります。

正に教科書通りのプロモーション活動が導入期におけるマーケティング戦略での成功につながっていくことになったのです。

成長期は競合企業の参入で競争が激化する!流通網の拡大で売上を加速せよ!

プロモーション戦略の成功により、食べるラー油の認知度が高まると、生産が追い付かないほど売上が急成長を始めます。プロダクトライフサイクルの次の段階である成長期に突入したのです。

成長期では、市場が急拡大するために多くの競合企業が参入して激しい競争が展開されるようになります。この食べるラー油市場においても、桃屋の『辛そうで辛くない少し辛いラー油』が供給不足に陥るほど需要が高まった状況を受け、業界トップのエスビー食品が桃屋から遅れること7か月、満を持して『ぶっかけ!おかずラー油チョイ辛』を市場に投入します。結果として、エスビー食品の食べるラー油も成長期の予想を大きく上回る需要に生産が追い付かず店頭にほとんど並ぶことのない事態に。この大手企業同士の食べるラー油戦争がマスメディアに大きく取り上げられるようになると、ブームに益々拍車がかかり、大手スーパーや中小メーカー、果ては外食産業までもブームにあやかろうと市場に参入することになります。

成長期のマーケティング戦略では、より多くの消費者に商品を販売する機会を広げるべく流通網を拡大するプレイス戦略が重要な鍵を握ります。食べるラー油も当初のスーパーばかりでなく、ファーストフード店やドラッグストア、お土産物屋に至るまで、数多くの店舗で目にするようになりました。

エスビー食品の試算によれば2009年から2010年にかけて、ラー油市場は短期間で実に10倍の120億円に急拡大することになります。
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