強迫性パーソナリティー障害とは
完璧を求めすぎる人は強迫性パーソナリティ障害に要注意! 得られた満足感と、それに費やした時間、労力は釣り合いが取れていますか?
世の中には、完璧主義的な傾向の人が少なくありません。完璧を期する対象は、人それぞれ。
ある完璧主義的な人は、外見が最優先。スーツや靴など見えるファッションはもちろん、肉体は鋼のように……と見えないところまで磨きぬきます。また、ある人は、仕事が命。自分が手がけるプロジェクトは、手抜きなし。その成果のみならず、仕事の手順の細部まで完璧を期す。
こうした傾向は、通常その人の個性の問題で、他人があれこれ言うことではありません。ただ、この傾向が強くなり過げている場合は注意が必要です。
もしも、外見の完璧さを最優先にする人が、自分の時間の大部分を外見を整えることに費やしすぎ、デートをする暇もなく、約束も守れなくなっていたとしたら、他人からは、何のために外見に気をつかっているの?と思われてしまうかもしれません。このような場合、強迫性パーソナリティ障害を発症している可能性には注意したいです。
今回は強迫性パーソナリティ障害の特徴、症状、治療法について、詳しく解説します。
強迫性パーソナリティ障害の特徴・原因
強迫性パーソナリティ障害の大きな特徴は、強すぎる完璧主義的傾向です。思考、行動パターンは、自分が心地よく思うルーチンにしばられやすくなります。
物事の枝葉に多大な時間、労力が取られてしまい、自分が満足のいく水準に一定時間内に到達することが困難に。また、事態が大きく変化した時に、柔軟に対処することも難しくなります。対人関係においても、他人にとっては耐えがたい水準であっても、自分はこうしているからと押し付けやすくなってしまい、協調的な対人関係を築きづらくなるなど、仕事、家庭生活において、トラブルが生じやすくなってしまいます。結果的に心の葛藤が高じ、うつ病を発症してしまうことも少なくありません。
強迫性パーソナリティ障害の頻度は、人口の約1%。男性に多く、幼少期に家庭で厳格な躾けを受けているケースなどが、しばしば認められます。強迫性パーソナリティ障害の原因自体は不明です。
強迫性パーソナリティ障害の症状
強迫性パーソナリティ障害では以下のような問題が、通常20代までに顕著になります。
- 物事の本質的目的を見失っているように、周囲から見えるほど、物事の枝葉に多大な時間、労力を取り、物事を一定期間内に成し遂げる事が困難になっている
- 家族、友人と過ごす時間、余暇の娯楽を犠牲にして、自分が最優先にしている物事に時間、労力を費やす
- 自分がしている事を他人に任せにくく、仮に、任せたとしても、自分の完璧主義的やり方を他人にも要求するので、協調的な対人関係を築きにくい
- 将来への不安が強く、不測の事態に備えて、家計の支出を極力、抑えるため、周囲の人が理解しにくいようなレベルの、質素な生活になっている
- 物事への価値観が固定的で、家族、友人のアドバイス、要求に耳を傾けない
強迫性パーソナリティ障害の治療法
強迫性パーソナリティ障害の主な治療法は心理療法。日常生活上のストレスや、心を苦しめている問題に対処していきます。
薬物療法が必要か否かは個人個人の病状によります。完璧主義的なこだわりが病的になっていて、日常生活に顕著な支障が生じている場合は、脳内神経伝達物質のひとつであるセロトニンを調節する「SSRI」というグループに属する治療薬が、心理療法の効果をより効果的に、あるいはかなり効果的にする可能性があります。また、気分の大きな落ち込みに対しては、抗うつ薬……など、状況に応じて、治療薬が選択されます。
強迫性パーソナリティー障害の経過は、個人差が大きいです。完璧主義的傾向が顕著でも、そうした気質を要求する仕事に就けていたり、なおかつ、仕事にのめり込む自分を支えてくれる伴侶の存在があったり……という好条件が重なり、人生を謳歌できる人もいます。しかし、この症状が原因で人生がイバラの道になってしまうケースも少なくありません。基本的には、早期に精神科(神経科)を受診することが望ましいです。
もしも社会生活上で、自分の完璧主義的な考えのせいで心の苦しみが増していると感じているかたは、精神科受診がそれを解決する最善の道になるのでは、といったことも是非ご考慮してください。
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