マンションには高いハードル
不動産業界と行政の間柄は、例えば不況時の経済対策を見れば、住宅購入支援策が真っ先に導入されることに代表されるように、連携が滞っているようにはみえない。むしろ陳情から底打ちまでの期間はどの業種よりも短いのではないかと思えるくらいだ。実際、2000年施行の(品確法の)住宅性能表示制度の実施率は、市場全体では20%程度であるにもかかわらず、分譲マンションに限っては50%を上回るほど普及が進んでいる。この数字からすれば、分譲マンション市場は国の推奨にならう優等生である。
つまり、企業の方針として決定すれば、プロジェクト別の(原価率などの)事情に限らず、全現場で導入する統率力はすでに実証済なのである。裏を返せば、この数値は法制度と業界が上手くかみ合い、顧客の品質に対する不安を払しょくした証しでもあると捉えることができよう。
ではなぜ、さらに上等の品質で、特典も盛り沢山な長期優良住宅が普及しないのか。これはひとえに基準をクリアするためのコスト増が相当にかかるからだといわれている。
規模などの条件によって異なるものの、およそ10%~20%の負担増を覚悟しなければならないようで、それだけの価値を買い手が認めるかどうか(ハードルが高すぎないかという意味も込めて)まだ見定められないと大手デベは口を揃える。「そもそも(鉄筋コンクリート造の)マンションには合わない制度」と断言する経営者までいるくらいだ。
高級マンションとの相性はいい!?
長持ちしないマンションを選ぼうとする人は稀だろう。であれば、掲げる方針と基準のギャップを埋める作業が求められるのと同時に、個別に対応可能かどうかの判断をもう少し厳密に行うことが必要だ。例えば価格帯別に検証すれば、資産性を重んじる高級マンション購入者との相性は悪くないはずである。建物の高さや形が耐震強度を高めやすいケース、規模が大きくコスト増を最小限に抑えられるケースといったように、個別の適合性をあげていくことを期待したい。ある程度の価格上乗せも、好立地の長期優良高級マンションであれば、顧客に受け入れられる可能性も十分考えられるのではないか。
堅固で安心。メンテナンスが容易でリフォームもしやすい。広い住戸、バリアフリー、省エネなど長期優良住宅の基本的な考え方は、ほぼすべての条件が高額マンションの条件に近しい。長期優良住宅に適合しやすいマンションこそ高級マンションである、といえなくもないくらいだ。必要ならば柔軟に改正をし、デベの供給意欲の高まりをもって認定基準を満たしたマンションが増えることを期待したい。
【長期優良住宅認定マンション】
ブランシエラ浦和/長谷工コーポレーション
プラウド夙川名次町/野村不動産(2ページ目2点の画像提供)
中央区晴海二丁目マンション計画/三菱地所・鹿島建設
六本木一丁目南地区第一種市街地再開発事業/三井不動産レジデンシャル
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