帝王切開/帝王切開

逆子とは?骨盤位が治る確率・逆子体操の効果・帝王切開が選択される理由

逆子とは、赤ちゃんがお腹の中で頭を下にした姿勢を「頭位」と呼ぶのに対し、頭を上、お尻(臀部)か足を下に向けた状態「骨盤位」のこと。赤ちゃんはお腹の中で回転しますが、妊娠30週目位になり頭が下にない場合「骨盤位(逆子)」と診断されます。逆子が分娩時までに治る確率、帝王切開が必要な理由、逆子体操やお灸の効果を解説します。

竹内 正人

執筆者:竹内 正人

妊娠・出産ガイド

逆子・骨盤位とは

逆子・骨盤位とは

赤ちゃんが「逆子」になることは意外と多い?

赤ちゃんがお腹の中で頭を下にした姿勢を「頭位」と呼びますが、頭を上、お尻(臀部)か足を下に向けた状態を「骨盤位(逆子)」と呼びます。妊娠中に逆子になる赤ちゃんはわりと多く見られますが、大部分はお産が近づくと頭位に落ち着いてゆきます。

<目次>

逆子・骨盤位だと帝王切開が選択される理由

逆子・骨盤位 帝王切開が必要な理由

逆子でも赤ちゃんのお尻が下になっていれば経腟分娩が可能

逆子の中でもお尻が先進している場合は経膣分娩も可能です。ただし、今はほとんどが帝王切開での分娩になっています。赤ちゃんの足が先進している場合は、以前よりほとんどが帝王切開を選択していました。

通常の「頭位」では、赤ちゃんの部位で一番大きな頭さえ娩出すればカラダもそれに続いて比較的スムーズに産道を通過することができます。ところが、逆子の場合はお尻が出ても、お尻より大きな頭がなかなか娩出できない場合があり、さらに足が先進の場合は、産道が十分に広がらず、臍帯脱出といって、足と産道の隙間から、臍帯が出てきてしまう緊急事態になる危険性も持ち合わせているため、帝王切開が一般的となりました。
ただし、長らく逆子・骨盤位の経腟分娩が実施されていないため、ほとんどの医師は骨盤位経腟分娩を見たことがなく、経験のある習熟した医師が少なくなり、経腟分娩を希望しても、受け入れてくれる施設はほとんどないのが現状です。

▽参考記事
逆子なら帝王切開になるの?
帝王切開の流れを解説!入院準備・手術による出産・術後まで

逆子・骨盤位が治る週数別確率

日本人を含むアジア人女性2,112人を対象として、妊娠28週から分娩に至るまでの逆子の頻度と、そのうち、分娩までに赤ちゃんが自然に頭位に回転する自然回転率の推移を調べた調査が行われました(「妊娠28週以降の骨盤位の頻度と自然回転率」平成29年7月)。

逆子・骨盤位 逆子が治る妊娠週数別確率

出典「妊娠28週以降の骨盤位の頻度と自然回転率」(平成29年7月)

妊娠28週での逆子の確率は全体の24.2%。そのうち分娩時に逆子の状態から頭位に自然回転していた割合は82.2%です。妊娠28週は、逆子でいる場合も多いですが、赤ちゃんはまだまだ子宮の中を回転したりして遊んでいます。妊娠29週目に赤ちゃんが逆子でいる場合でも、28週目と同様に赤ちゃんはまだ子宮の中を回転したりして遊んでいる状態です。

妊娠30週では、逆子の確率は全体の17.4%ですが、分娩時までに頭位に自然回転する確率は、そのうちの72.8%とまだまだ高く、やはり赤ちゃんは子宮の中を回転したりして遊んでいる状態です。妊娠31週目で赤ちゃんが逆子でも、まだ分娩時までに頭位に戻る確率は高いでしょう。

妊娠32週での逆子の割合は11.6%。逆子から頭位への自然回転率は58.6%と、分娩時までに頭位になるチャンスはまだ約6割くらいあります。妊娠33週目では、妊娠28週目などと比べて頭位に戻る確率は低くなってきますが、それでもまだ約4割くらいは分娩時までに頭位に戻ります。

逆子・骨盤位 妊娠週数別割合

赤ちゃんが分娩までに逆子から自然に戻ってくれる確率はどのくらい?

妊娠34週では逆子の割合は7.6%となっていますが、逆子から頭位への自然回転率は37.3%です。この時期で逆子の場合、分娩時までに逆子が治るチャンスは低くなりますが、それでも約2~3割くらいは頭位に戻ります。妊娠35週目などでも逆子の場合は、赤ちゃんがこの位置が心地よいということかもしれません。頭位に戻る確率はだいぶ低くなります。

妊娠36週目では逆子の割合は5.6%となっており、分娩時は5.4%という結果からもわかるように、分娩が近づくにつれ下降していた逆子から頭位への自然回転率は10.2%と約1割です。この時期で逆子の場合は頭位に戻るチャンスは低く、赤ちゃんがこの位置が心地よいということかもしれません。

▽参考文献
「妊娠28週以降の骨盤位の頻度と自然回転率」(平成29年7月)
埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科 東原亜希子, 聖路加国際大学大学院 堀内成子, 聖路加国際病院 女性総合診療部 山中美智子

逆子体操の効果ってあるの?

逆子・骨盤位 逆子体操の効果

「逆子体操」の効果は?

妊娠30週を過ぎても逆子の場合、「逆子体操」をしましょう、と聞くことがあるかもしれません。「妊娠28週以降の骨盤位の頻度と自然回転率」によると妊娠30週では17.4%の赤ちゃんが逆子ですが、逆子体操をしてもしなくても、最終的に逆子で産まれてくる子は5%ほどで、変わりがないことがわかっています。つまり、「逆子体操」という名前はついていますが、この体操をすることで逆子が治りやすくなる効果は科学的には証明されていないのです。

また、赤ちゃんの背中が上になる向きで寝てください、と指導されるかもしれません。逆子の赤ちゃんの背中がお腹の左側にあれば右側を下に、赤ちゃんの背中がお腹の右側にあれば左側を下にして横向きに寝ると赤ちゃんが頭位にもどりやすいという指導です。ところが、この姿勢の有効性も証明されていません。

妊婦さんの姿勢が悪いから、体操が下手だから、赤ちゃんが逆子になっているのではなく、赤ちゃんがその位置がいいから、逆子でいるんだと思います。お母さんができる限り楽な姿勢をとる方が、赤ちゃんにも心地よくて、逆子が治りやすいという考え方も成り立つかもしれません。

▽参考記事
逆子なら帝王切開になるの?

逆子にお灸って効果あるの?

鍼灸なども逆子を治すのに有効とよく言われていて、足にある「三陰交」「至陰」などのツボにお灸をすると赤ちゃんがよく動くようになるようですが、逆子を治る効果は科学的に証明されているわけではありません。

▽参考記事
逆子なら帝王切開になるの?

逆子を治す外回転術とは?

逆子・骨盤位 外回転術とは

逆子を治すには、お腹の上から胎児を回す「外回転術」という方法も

医師によっては、お腹の上から胎児を回す「外回転術」という技で逆子を治そうとします。

妊婦さんにお尻側を上げるようにして仰向けになってもらい、赤ちゃんのお尻がお母さんの骨盤から出てくるようにした状態で、お腹の上から医師が両手で赤ちゃんが前回りをするような方向に軽く力を加え、頭位に戻るように回転させる手技です。

妊娠34週以降に行う場合が多いですが、成功率は3~5割くらいです。外来の時に簡易的に試す場合もあるかもしれませんが。今はリスクを説明して、あらためて時間を予約して行うことが多いでしょう。子宮の張り止めの点滴、あるいは硬膜外麻酔などを併用すると成功率は高くなりますが、外回転自体を施行している医師、施設は現在、ほどんどないのが現状です。

外回転の一番のリスクは、頻度は少ないですが、胎盤剥離を起こし緊急帝王切開になる危険があることです。保険適応がなく自費のため、費用はその施設により違ってきます。

▽参考記事
「逆子です」と言われたらどうなるの?

【関連記事】
逆子の帝王切開はいつ決まる?手術の確率・自然分娩は無理?

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