緊急帝王切開は、赤ちゃんとお母さんを守るための手術

緊急帝王切開

緊急帝王切開が赤ちゃんや母親を守るために必要な理由

緊急帝王切開(以下、緊急帝切とする)は、以下の2つの状況で行います。
  1. 妊娠中、分娩中を問わず、何らかの原因で赤ちゃん、あるいはお母さんが危険な状態となり、緊急に赤ちゃんを娩出しなければならない、ないし分娩を終了してお母さんの安全を確保しなければならない場合
  2. 陣痛が来ているのに、回旋がうまくいかない(回旋異常)、児頭が骨盤より大きい(児頭骨盤不均衡)などの理由で、分娩が進行せず、経腟分娩を期待できない場合
     

赤ちゃん側の理由で緊急帝王切開となる主な適応とは?

胎児適応といって、赤ちゃん側の理由で緊急帝切となりうる主な状態について説明します。
  1. 胎児機能不全(NRFS:ノンリアシュアリング:Non-Reassurrinng Fetal Status)
    妊娠中あるいは分娩中に赤ちゃんの状態に問題がある、あるいは将来問題が生じるかもしれないと判断された場合をいいます。
    分娩が進行し、子宮口が全開大し赤ちゃんが十分に下りてきている状態であれば、吸引分娩か鉗子分娩で経腟分娩にしますが、そうでなければ緊急帝切になります。

    以前は、「胎児仮死」「胎児ジストレス」と呼ばれていましたが、現在、この用語を使わなくなりました。それは、胎児心拍モニタリング検査や超音波検査は、元気な赤ちゃんを元気と診断することは得意ですが、元気でない赤ちゃんを元気でないと診断するのは苦手だからです。

    つまり、元気がないと診断されても、その中には本当に元気がない赤ちゃんのほか、実は元気な赤ちゃんも多く含まれています。ですから、今は、赤ちゃんの状態を、「赤ちゃんは元気(リアシュアリング)」か「赤ちゃんは元気かどうかわからない(胎児機能不全:ノンリアシュアリング)」と分類します。
     
  2.  臍帯下垂・臍帯脱出
    胎盤から赤ちゃんに酸素を送る命綱である臍帯(へその緒)が子宮口近辺まで下がってきたり、子宮口から腟内へ脱出した場合、赤ちゃんに酸素が送られにくくなり、急速に赤ちゃんが危険な状態に陥る可能性があるので、緊急帝切の適応となります。
 

お母さん側の理由で緊急帝切になる適応とは?

母体適応といって、お母さん側の理由で緊急帝切となりうる状態について説明します。
  1. 分娩停止・遷延分娩
    分娩停止とは、陣痛開始後、十分な陣痛が来ているのにもかかわらず、2時間以上にわたって分娩の進行が見られない場合で、回旋異常や児頭骨盤不均衡(CPD)などが原因となります。まったく分娩が進まず、吸引分娩や鉗子分娩のできない状況では、帝切が選択されます。

    一方、初産婦で30時間以上かかるのを遷延分娩といいます。時間が長いだけでは帝王切開をしなくてもいいのですが、遷延分娩では母体疲労に加えて、胎児機能不全に陥るリスクも高くなるので、状況に応じて緊急帝切が選択されます。
     
  2. 重症妊娠高血圧症候群
    妊娠中・分娩中にかかわらず、血圧が160/110以上で、特に頭痛や高度の蛋白尿が見られる場合には、母子の安全を考えて緊急帝切が選択されます。この場合、胎盤機能が低下していることが多く、赤ちゃんは小さめ(胎児発育遅延:FGR)で、胎児機能不全(赤ちゃんは元気かどうかわからない)のリスクも高くなります。
     
  3. 常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり:早剥 そうはく)
    胎盤が常位にあるとは、前置胎盤や低置胎盤に対する言葉で、胎盤が子宮口を覆っていたり子宮口付近の低い位置になるのでなく、分娩には影響ない正常の位置にあるということです。その胎盤は、通常、赤ちゃんが産まれた後に子宮から剥がれて娩出しますが、正常の位置(常位)にある胎盤が何らかの原因で分娩前に剥離することを、常位胎盤早期剥離といいます。剥離の程度が大きいほど、子宮内での出血が多量とな り、腹痛、貧血がひどくなり、赤ちゃんだけでなく、母体も重症になります。妊娠高血圧症候群、絨毛膜羊膜炎などが誘因となります。
     
  4. 切迫子宮破裂
    児頭の圧迫などで、子宮の下部筋層が薄くなり、子宮破裂の危険性が考えられる場合、子宮下部、恥骨上に圧痛を認めます。子宮筋が薄くなるので子宮収縮(陣痛が微弱となる傾向も)はなくなり、分娩が進みにくくなります。
    そのまま収縮が強くなると破裂する可能性がでてくるので、これは母子を守るための反応です。膀胱も引き延ばされるので、血尿が見られることがあります。
    ただし、子宮破裂徴候はTOLAC(トーラック:既往帝切後妊娠の経腟分娩トライアル)時に起きる事が多いので、帝王切開の既往後に経腟分娩をトライアルすることがなくなってきた現在、切迫子宮破裂の適応で緊急帝切になることは少なくなりました。なお、TOLACでの子宮破裂の頻度は約0.5%ですが、帝王切開の既往がない場合の自然子宮破裂は約0.01% と言われています(*1)。
 

超緊急帝王切開(グレードA)とは

帝切が分娩全体の20%を超え、緊急帝切も増えてきています(*2)。そうした中、緊急帝切でも、一刻をあらそうより緊急なケースを、超緊急帝王切開(グレードA)と呼ぶようになりました。病態としては、子宮破裂、常位胎盤早期剥離、臍帯脱出、胎児持続性徐脈などで、緊急帝切の約1%にあたります(*3)。グレードAでは、手術決定から赤ちゃんの娩出まで20分以内を目標とし、特に大きな病院では、何があっても最優先できるよう、通常の緊急帝切とは違う手順で帝切になります。

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