ネグレクトとは

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世話をしなければならないのにできなくなる虐待ケースも多い

近年、報告が急増している児童虐待。2009年度に全国の児童相談所で対応した児童虐待相談件数は4万4210件に上り、10年前(1999年度)の約4倍になっています。

児童虐待防止法によると、児童虐待は身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の4種類に分けられます。これらのなかでも、「ネグレクト」という言葉は、耳慣れないと感じる方が多いでしょう。ネグレクトとは、正常な発達に必要な食事量を与えず、長時間放置するなど、保護者として必要な育児を放棄することです。

ネグレクトは、子どもを憎んで苦痛を与えたい、または子どもを利用して自己愛や快楽を満たしたいという、利己的な欲求から始まる虐待とは限りません。

世話をしなければと思っているのに、手がつけられない。当初は真摯に子育てに取り組んでいたのに、育児ができなくなってしまう。このように、ネグレクトのなかには、精神的に追いつめられた状況から育児ができなくなることで、結果的に虐待につながってしまうケースが、多分に含まれているのです。


「他人事じゃない」とつぶやく母親たちの本音

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あってはいけない事件なのに「他人事じゃない」と思ってしまうのはなぜ?

ネグレクト事件が報道されるたびに、世間は震撼し、怒りと侮蔑の言葉が飛び交います。しかし、多くの母親たちの心に湧く本音は、「たしかにひどい。でも……他人事じゃない」という思いではないでしょうか。

泣きやまない子どもたちを抱えて、眠れない毎日。夫は家にはほとんどおらず、たまに帰ってきても、妻にも子どもにも無関心。実家にも嫁ぎ先にも、頼れない。近所とも交流はなく、友だちとの語らいもない。密室での育児。気晴らしをするお金もなく、生活はいつも苦しい。こうした状態では、理性的な判断能力が働かなくなってしまうのも無理はありません。

たとえば、子どもを置き去りにして、1人夜の街に逃げ出してしまう母親とはどんな心境なのでしょうか。

泣き叫ぶ子どもの声に耳をふさぎながら、玄関の扉を開けて真夜中に1人で外に飛び出す。そこには一番輝いていたころの自分が、笑いころげながら歩いていた街が広がっている。久しぶりに知る、1人で歩く身軽さ。繁華街のネオンが街の深部へと誘いこむ。一時の享楽が、永遠になるかのように幻惑される。

逃避から現実に戻れなくなった母親は、子どもから急速に心が離れます。罪深い行為ではありますが、「他人事じゃない」とついつぶやいてしまう母親たちの心情にも、私たちはもっと耳を傾けるべきではないでしょうか。