理想的な「ヴィンテージマンション×リノベーション」
いまマンション市場では、新築中古ともに品薄感が出はじめている。とくに値ごろ感のある築浅の中古マンションを探すのは困難な状況だ。そんななか、立地のわりにリーズナブルなヴィンテージマンションが注目を集めている。リフォームされた中古マンションではなく、築30年以上の物件を買って自分好みにスケルトン(躯体)から新たに設備と内装を施すのである。しかし、この方法はリスクも高い。構造や設備の状態、修繕の計画性や資金の余力、管理規約のチェックなど専門的な事前の確認作業を怠っては、失敗をする確率が高くなるからだ。
そこで今回は、ヴィンテージマンションを購入して見事理想通りに成功した事例を紹介しよう。取材先は「目黒ハウス」。神宮前に次ぐ、ヴィンテージマンションの宝庫として知られる目黒区三田の一画である。
「目黒ハウス」は1969年築
「目黒三田通り」は、JR山手線「目黒」駅から「恵比寿」駅にかけて、線路に沿って南北に走る道路である。西側は目黒川に向かって急な斜面地となるが、この高台の地形を利用して新旧様々な分譲マンションが立ち並んでいる。「目黒ハウス」もそのひとつ、1969年築のヴィンテージマンションである。一見オフィスビルのような外観は、40年以上前の建物とは思えない大きな窓からくる印象である。立地の特性を享受すべく開かれた大きな開口部は、シンプルながらも住宅としては個性的な面持ちで、ありきたりな集合住宅とは一線を画している。
分譲主は住友不動産。設計は「広尾ガーデンヒルズ」を手掛けたことでも知られる圓堂建築設計事務所である。
大規模修繕後の利点
「目黒ハウス」は数年前、大規模修繕を実施。エントランスまわりの改装、共用配管の刷新、外壁塗装工事など耐震補強を除く大がかりなメンテナンスをほぼ完了したということである。総戸数29戸と決して大きなスケールではないが、滞りなく改修が実現したのは、管理組合の計画性と実行力によるものだろう。100平米を超える広い面積の住戸も多く、オーナー自ら住んでいる比率が高いことも成功要因のひとつだったのではないかと推測する。
では、専有部に入ってみよう。