ジョギング・マラソン/ジョギング・マラソンの走り方、トレーニング

マラソンは体づくりから! 初心者でも出来るスピードトレーニング

マラソンに重要なものは、エリート選手でも市民ランナーでも同じ。42kmを最後までしっかりと走り通せる、持久力のある体づくりです。初心者でも、筋肉がつき体さえ出来れば、スピードもすぐにつけることができます。まずは、しっかりと体作りをしましょう。

谷中 博史

執筆者:谷中 博史

ジョギング・マラソンガイド

スピードがないからマラソンがだめなのか?

マラソンは体づくりから! 初心者でも出来るスピードトレーニング

マラソンは体づくりから

陸上長距離界でも超著名な指導者の方と席を同じくすることがあったときに、日本の男子マラソンの立て直しに話が及びました。陸連指導部の方がよく口にするのは、日本のマラソンランナーはスピードがない、ということ。トラックで(ということは5000mや10000m)スピードをつけないと太刀打ちできない、という言葉です。その席で私が10000mよりクロカン中心にするべきだと言うと、「この人、正気か?」というようなびっくりした顔をしていたのが印象に残りました。

マラソンの力(タイムを短縮する走力)をつけるトレーニングには、二つの方向性があります。一つはスピードトレーニングから接近する方法です。例えば、サブスリーを狙うなら、サブスリーのペースで走れる距離を次第に伸ばしていくのです。

ハーフまでしかキロ4分15秒で走れないなら、なんとか頑張って走れる距離を22km、23kmと伸ばしていくわけですが、これは簡単にはいかない。毎日そんなに長い距離を走っていられないからです。20km台ならともかく、30kmを超えると週に1回程度でしょう。

では、その他の日のトレーニングはどうするかというとスピードを付けるためにインターバル走やレペティションを行う、ということになりますが、このようにスピードトレーニングばかりをしていると足に負担がかかりすぎて故障を起こす確率が高くなります。

特に市民ランナーの場合、練習場所に恵まれていません。平日にウレタン舗装のトラックでスピードトレーニングをできる人はごく限られるでしょう。硬い舗装路でスピードトレーニングを行えば、足底腱膜炎や膝の故障を起こさない方が不思議なくらいです。

クッションの良いシューズを履けばいいのではないかと考えるところですが、クッションがよいと接地時間が長くなってスピードトレーニングにならないですね。

長距離指導者の方がいうのは、これとちょっと違っていて、5000m、10000mで世界に太刀打ちできるスピードを、ということですから、5000m、10000mの世界レベルのスピードでインターバル走などを行ってスピードをつけるということになります。

これも至難とは思いますが、もし可能だとして、そうすればマラソンも世界レベルで走れるかというと私は違うのではないかと思います。

ケニアやエチオピアのマラソン選手が長距離種目でも日本記録をはるかに上回る記録で走れるのは、彼らが中・長距離走のトレーニングをしてスピードを付けたわけではなく、ましてやそのおかげでフルマラソンを2時間4~6分で走るランナーが頻出しているわけではないでしょう。
 

マラソンは子供の頃からの体づくりが基礎に

中学生くらいまでは多様な種目に挑戦させたい

中学生くらいまでは多様な種目に挑戦させたい

彼らが早いのは、マラソンランナーに適合した肉体的条件を遺伝的に進化させ獲得しているし、高地に生活しているということもあるでしょうが、それだけではなく、幼い頃からアップダウンのある長距離を歩いたり走ったりしているからだと思います。彼らは中長距離トレーニングでフルマラソンが速くなったわけではなく、フルマラソンに適した肉体で中長距離トレーニングをしたら、中長距離もすぐ速くなったということだと思います。

日本でもトップテンに入るようなマラソンランナーは、子供の頃からとにかく走り回る生活をおくっていたようです。実業団レベルでも長距離が速い人で家の中で遊ぶことが多かった、なんていう人は私が知っている限り皆無です。

では、選手育成対策としてはどうすればよいのかというと、素材対象は子供の頃から里山を走り回っていたというような地力を持った子供を発見すること。中学生くらいからトラックで鍛えあげられて速いという素材は、伸びしろが少ないと考えます。

中学生くらいまでは、クロストレーニングでいろいろな競技をさせるべきだと思います。中学生の陸上競技大会種目から長距離をなくして、短距離+中距離+長距離+ジャンプの混成種目に変え、全体的な発育を促しつつ種目適正を見極めて高校に送り出す、というくらいでよいと思います。

女子マラソン界は、そうした身体づくり→持久力養成→スピード養成という手順を踏んでいる例が多く見られます。女子マラソンの活躍が顕著なのは、そのためだと思います(ケニア、エチオピアの女子選手が少ないということもないわけではありませんが)。身近によい実例があるので、男子もそうしたらいいのにと思うのですが、いろいろと理由があるのでしょうがそのような考え方で選手育成をおこなっている例は少ないように思います。
 

マラソンには何歳からでもスピードより体づくりから

トレランは地力をつけるのに恰好のトレーニング

トレランは地力をつけるのに恰好のトレーニング

さて、サブスリーを目指す市民ランナーはどうすれば、ということです。

30歳、40歳になるまでろくに運動をした経験がないというような方もいることでしょう。それでは我々は望みがないじゃないか、と悲観することはありません。何も世界選手権やオリンピックに出ようというわけではありません。サブスリーという世界記録の50%増しに近い時間で走ればいいわけですから。

しかし、サブスリーへの近道はないということです。ムダな遠回りはサブスリーを遠ざけますが、近道はありません。エリートランナーでも極力野山を歩いたり走ったりして地力をつけたように、市民ランナーも遅いスタートですがアップダウンを長時間頻繁に走るようにし、少しでもマラソンランナーの体に近づけるように努めることがサブスリーへの近道ということになります。

マラソンランナーの体に近づくほどに、トラックでスピードトレーニングを行えば、5000m、10000mを思いもかけないようなスピードで走れるようになります。

体づくりの段階で5km程度の競技に出て、スピードトレーニングを主としてやっているランナーに負けたりすると、やはりスピードトレーニングをしなければだめなのだろうか、と考え込んでしまうかも知れませんが、焦ることはありません。マラソンレースになれば、そんなライバルにも絶対勝てます。マラソンで勝ってからスピードトレーニングをおこなえば5000mでも勝てるようになります。

まず、マラソンをそこそこで走れる体をクロカンやクロストレーニングで作り、そこにスピードトレーニングを加えていくというのがもう一つのマラソンの力を付ける方向性であり、こちらが王道だと私は考えています。


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