メンタルヘルス/その他の心の病気

失言癖とは?「口は災いの元」で困らないために

【医師が解説】「口は災いの元」になることがあります。うっかり言ってはいけない事を言ってしまい、あとで後悔する事は、誰にでもあるかもしれませんが、もしそれが深刻化している場合、しっかり対処したい「失言癖」の可能性があります。今回は、失言の原因にもなる、時に何かを言ってしまいたくなる衝動への対処法を詳しく解説します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

口は災いの元? うっかり失言が原因で人間関係のトラブルも

失言への対処法

口は災いの元。うっかり人を傷つけてしまうことがないよう、失言癖がある人はしっかり対策を考える必要があります

「口は災いの元」とは、私たちの日常を戒める、昔からの金言です。実際、何かを言いたい気持ちになり、その言葉をそのまま口にしてしまい、相手を傷つけてしまったり人間関係のトラブルが起こったりして、あとで後悔するようなことは、誰にでも起き得る問題です。もちろん、その程度にはかなりの個人差があります。そして、なかには失言癖に悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。後悔するのに失言癖が直らない場合、何かを言いたいという衝動のコントロールに何らかの問題がある可能性があります。

今回は、そうした失言に関わる心の問題と、それを予防するためのアドバイスをメンタルヘルスに関連する話題として、詳しく述べます。
 

失言癖とは……衝動的に発言してしまう原因

何か失言してしまう時は、心の中に浮かんだ事をそのまま言ってしまったような時が多いかと思います。それには、内心思っていた事をそのまま口にしてしまった場合もあれば、自分でも思ってもいないような言葉が何かのはずみで口から出た場合もあるかもしれません。いずれにせよ、失言が出る原因自体は、何か言ってしまいたい衝動をセーブできずに、そのままその衝動に反応してしまった…ような事ですので、まず、その衝動から分析してみます。

それでその、何かを言ってしまいたい衝動はどういう時に発生しやすいでしょう? 実際にそれを口にする事で、その「言ってしまいたい」衝動を発散させた瞬間は、かなり心がすっきりするかもしれません。それで、その何か言ってしまいたい衝動が出てくる前は、心のうちがかなりモヤモヤしていたかもしれません。見方を変えれば、心のうちが何かモヤモヤしてきた時に、そのモヤモヤを晴らすための処方箋として、何か言ってしまいたい衝動が出ると同時に、口からその言葉が出る、失言癖が出来上がってしまった可能性もあります。

心がモヤモヤする原因自体はいろいろあります。例えば、「日常生活のストレスからイライラしていた」、あるいは、「単に気分が冴えない」、また場合によっては、「何かでコンプレックスが刺激された」など、いずれにせよ、心がモヤモヤしやすくなっている時は、心が普段の状態とは少し違います。

それでも大抵は、その時、何か変な事を言いたい衝動が仮に来ても、何とかそれを抑えられるはずです。もしその衝動のコントロールが効かなくなっていれば、そうした衝動にストップをかけるために必要な中枢神経系の機能がはっきり低下しています。その原因は一概に「これだ!」と、断定するのは時に難しいですが、分かりやすい例としては、疲労がたまっている時や飲酒時などに起きる失言です。
 

失言癖の克服法・対処法……記録を取ることも有効

もし何か変な事を言ってしまっても、言った本人は、すぐにそれを忘れてしまいがち。でも、聞いた相手はそれをずっと覚えていたりします。

自分自身のこれまでを思いかえしてみても、「あの人はあの時、私にこう言った」といった事はただちに思い出せても、「私はあの時、あの人にこう言ってしまった」事はなかなか思い出せないかもしれません。 もしも誰かから「あなたは前、私にこんな事を言った」と責められる覚えがある方は、これを機会に1つ、真剣に対策を立ててみませんか? そのヒントとして、何か失言した度にその記録を残しておけば、あとで、どういう状況で何を言ってしまいやすいかが、はっきり頭に入ります。

つい何か言ってしまう事自体は、人間は機械ではありませんので、完全にゼロには出来難いでしょう。でも、出来るだけゼロに近づけたいです。それには、心の落ち着き具合は大事なポイント。実際、心がしっかり落ち着いている時は、相手への理不尽な非難など、その場にふさわしくない言葉はあまり出ないでしょう。日常のストレスを上手に発散させて、心の緊張を適度なレベルに保つ事は失言防止の大事なポイントです。

もっとも、うっかり言ってしまった事は、もしかしたら、その人の本音かもしれません。少なくとも、それを聞いた相手は「それがその人の本音だ」と受け止めやすいです。ただ、ここで問題になるのは、うっかり相手の気に障ることを言ってしまった事です。もし、相手にうっかり言った言葉が、相手を誉める言葉ならば、何も問題はないはずです。そうした際に、うっかり相手をけなすのではなく、誉めれるようになる為には、普段から物事や他人のネガティブな部分にではなく、その良い部分に目を向けるようにしておきたいです。また、自分の思考が、そうしたネガティブな部分にばかり向いていれば、自分の気持ち自体もネガティブになってくるもので、それゆえに、そうした周りのネガティブな部分により敏感になっていくような、悪循環にもなりやすいです。

実際、何か変な言葉が口から出そうになった時は、何してでもストップをかけたいです。それは変なたとえに聞こえるかもしれませんが、2ストライク後のボール玉に、出かかったバットを何とかこらえるようなものかもしれません。その際のポイントとして、アルコールの摂取や疲労の蓄積はストップをかける妨げになりやすい…といったことをまずご用心ください。一方、失言を防ぐ対極の対策として、「しゃべらない!」もありますが、やはり会話は人間関係を成立させるための重要な要素ですので、そういう方向はパスしたいです。また、失言がありがちな方は、これまで周りの誰かから、「よく考えてから何かを言ってね」みたいなことを言われたかもしれません。実際、そうなれば良いのですが、よくよく考えてみると、よく考えて何かを話せるようになる事は、立派なチャレンジだと思います。

そして、もし何か変な事を相手に言ってしまった時は、相手の心が深く傷つく前にすぐ謝罪しましょう。実際、謝る事で相手へ自分の誠意を表せるだけでなく、自分でも「同じ間違いを繰り返さない!」といった決意も高まります。それで、最後に繰り返しますが、くれぐれも口を災いの元にしないように、皆さまどうかお気を付け下さい。

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