メンタルヘルス/(読み物) 文化依存症候群・地域特有の病気

ススト(中米):トラウマで魂が抜ける病気(2ページ目)

心の病気の中には、その人の属する社会や文化の影響を強く受けるものがありますが、メキシコやグアテマラでは、怖い目にあった後、病気になるスストと呼ばれる心の病気があります。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

スストの治療には魂を元に戻す儀式が必要

体から離れてしまった魂を戻す為に、クランデロ(curandero)と呼ばれる治療者がバリダ(barrida)と呼ばれる儀式を行います。儀式の内容は地域ごとにバリエーションがありますが、バリダはショックを受けた直後にやるのが良いとされています。例えば、恐ろしい蛇を見て病気になってしまったら、すぐ家族がクランデロを呼んできます。

その儀式では、まず、本人にショッキングな事件の詳細を思い出してもらいます。周りにいる友人や家族が治療者と一緒に祈りを唱えたり、魂が戻ってくるように本人の名前を呼びます。本人は十字架の軸の上に横たわり、クランデロからハーブの入った液体を体にかけられます。最後に、ストーブの横に移されたり、毛布にくるめられる事によって、多くの汗をかき、儀式は終了します。この儀式は治癒するまで、数日ごとに繰り返されます。症状が軽い場合は、オレンジの花やブラジルボク(brazil wood)などをお茶にして飲むだけで済むそうです。

バリダはトラウマを癒す為の、メキシコやグアテマラの文化独特のやり方であると思います。バリダを精神医学的な観点から見ると、ハーブは本人をリラックスさせる一種の薬物療法であり、クランデロによる儀式は一種の心理療法と見ることもできるでしょう。多くのストレスを抱えている現代人にとって、癒しの儀式はなかなか興味深いものかもしれません。


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