東南アジアの国々で起きていたアモックとは? |
こうした心の病気は文化依存症候群と呼ばれています。例えば、若い女性に多い拒食症がそうです。拒食症の背景には、「スリムな体がかっこいい」とされる現代の風潮があります。
文化依存症候群は、地球上のある社会、文化圏で主に出現するもので、地域的にも、また、その文化の存在している時代的にも限局しています。今回は、文化依存症候群の代表的なものの一つとして、東南アジアの心の風土病、アモックを紹介したいと思います。
人を無差別に殺傷するアモック
マレーシア、インドネシア、フィリピン。東南アジアのモンスーン気候の国々ですが、近代化される以前の部族社会では、アモックと呼ばれる、人を無差別に殺傷する事件が起きていました。何か悲しい事があったり、侮辱を受けた後、部族の人との接触を避け、引きこもり、暗い目をして、物思いにふけっているような状態になる。そして、突然、身近の武器を手に、通りへ飛び出し、遭遇した人をかたっぱしから、殺傷してしまう。殺戮は本人が自殺、または、殺されるか、取り押さえられるまで続き、後で正常に戻った時には、人を殺傷していた時の記憶を失っている。
アモックは、大航海時代、マレー半島にやってきたポルトガル人などから、ヨーロッパへ伝えられました。エンデバー号で世界を航海をしたイギリスの探検家キャプテン・クック(1728-1779)の手記にも、アモックについての記述があります。アモックは、amokとして英語になりました。突然、理性を失った行動を取ることを amok または run amok と言います。アモックはマレー語由来の英語として、最も有名なものの一つです。
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