伝統食+ほどよい洋風化
長寿食として知られる昆布も、沖縄料理にはよく使われます。 |
前述の『健康長寿食』によると、大正時代には日本人は摂取するたんぱく質は、ほとんど植物性でした。高経済成長期から日本人の食生活は洋風化され、昭和35年以降、動物性たんぱく質や脂質の摂取量は年々増加します。けれども日本の伝統食品である、魚介類や大豆、野菜、海草の摂取量はそれほど変化がなく、伝統的な和食+動物性タンパク質や脂肪が適度に入り込んだパターンとなった頃と、平均寿命の伸びと連動していきます。もちろん医療の進歩なども貢献していますが。
かたよりなく、ほどほどに食べるが最優先
「伝統食+ほどよい洋風化」はちょうど沖縄の長寿食の特徴に共通しています。で、お肉の食べ方ですが……。仏教の影響で長年肉食を禁じられていた本土と比べて、沖縄ではお肉の摂取量が多いのですが、中でも特に豚肉がよく食べられています。とはいえ昔は、毎日毎日たくさんの豚肉を食べているわけではなく、日常は穀類や芋、野菜、豆類、海草を中心とした食事に、限られた行事のご馳走食として豚肉を食べていました。
それも時間をかけて茹でて脂を除いたり、豚肉と昆布を一緒に炊いたり、また内臓や耳、豚足など余すところなく食べる事で、ミネラルなどの様々な栄養がとれていたのだと思います。伝統食には、健康を維持する上で食べ方の知恵が盛り込まれているのです。このことをきちんと理解しなければなりません。ただ豚肉を食べさえすれば長寿に効果的とはいませんね。
現代人の食生活は、「伝統食+ほどほどの洋風化」と比べると、肉類や油脂類は増えていますが、主食のごはんや野菜類などは減っています。特に男性の多くは、肥満傾向にあります。食が細くなり栄養不足から抵抗力が弱くなるお年寄りや「やせ」が気になると若い女性などは、適量の動物性タンパク質や脂質を摂取することは、健康や長寿に役立ちます。
けれどもコンビニやファーストフードでお肉や脂肪に偏った食事ばかりしている若い人たちや、仕事絡みとはいえ外食で脂っ気の多い食事が続いている人は、肉類や脂肪分は控えめに、主食のごはんはしっかりと、大豆・野菜・海草、果物もしっかり食べ合わせる食事を意識するようしましょう。もう少し食事バランスについて知りた方は、こちらへ。
楽を求めず、生きること
ただいたずらに寿命が伸びるだけでも困ります。できるだけ人生の中で健康寿命を長くできるようにしたいものです。そのための取り組みは、もちろん食生活だけではありません。沖縄の高齢者が元気なのは、抵抗力の弱くなる高齢者のカラダに快適な温暖な気候や、地域社会との関わりが維持され自分の存在意義を感じられる人間関係なども揚げられます。また沖縄の男性に替わって第1位に輝いた長野県は、一人当たりの老人医療費が全国一少ないとのこと。60年代までは医療費が全国一多かったにもかかわらず、県独自の保健補導員制度を導入し、地域の隅々にまでボランティアなどを行き渡らせて、食生活週間の改善に努めたそうです。また高齢者就業率は全国トップで、多くの人たちが農業に従事していることにも注目したいと思います。(参考/神戸新聞/2005.5.8付け)
人間、楽をすることばかり考えずに、最後までカラダも頭も使わないとダメ、ということですね。いつまでも健康でいるためには、自分で料理をするということも、たいへん役に立ちますので、詳しく知りたい方は、こちらをご参考に。
参考図書/健康長寿食(新居裕久著・NHK出版)
■関連リンク
長寿に役立つ食べ物について
●日本人の長寿の秘訣 命のコメ(食と健康)
●長寿を支えるパワー食 ゴーヤー(食と健康)
●ガン予防に革命をもたらす昆布(食と健康)
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