オフショア開発の歴史
通信回線が整備されたこともあり、オフショア開発がすすむ
当時、円高が進んだことから日本企業の海外進出が始まっていました。狙いは現地へ進出した日系企業からのシステム受注。ただし最初からうまくいかないので、古巣のITベンダーから仕事をまわしてもらいました。社長が日本へ出張し、打ち合わせを行い海外で開発。プログラムの入ったテープを飛行機で社長が届けたりしたことも。これが初期のオフショア開発です。
1990年代になり通信回線などのインフラが整うと、電子メールでのやり取りや電子会議が可能になります。欧米との時間差と英語でやりとりできるメリットをいかし、オフショア開発で伸びたのがインド。お客さんは欧米のITベンダーで、特にバンガロールはインドのシリコンバレーと呼ばれるまでになりました。人件費の安さに目をつけた日本の大手ITベンダーを中心に、現地企業と組んだ合弁会社が設立されます。これで安いコストでシステム開発できるというバラ色の未来を描きましたが結果は失敗の連続。
オフショア開発が失敗した理由
オフショア開発が失敗した理由は、国内の協力会社にアウトシーシングしたように海外でもアウトソーシングすればよいと安直に取り組んだこと。■メンタリティーの違い
そもそも日本人と中国人はメンタリティーが違います。明日の午前中までと期限をきって仕事を頼むと、帰ってくる返事は「没問題(メイウェンティ-)」。日本語では「大丈夫、問題ない」という意味ですが、翌日の夕方になっても仕事ができていません。どうしてできていないんだと聞くと、返ってくる返事は「没弁法(メイバンファ-)」。日本語で「しょうがない」という意味です。
■安易な進捗管理
オフシェア開発で安易な進捗管理を行い、相手の問題ないという言葉をそのまま聞いていると、最後に納期に間に合わないことが分かり修羅場になることが多々あります。進捗管理は節目、節目で行う、進捗を見える化する、報酬と結びつけるなど様々な手を打たなければなりません。
■品質管理への意識
品質の問題もあります。日本は品質に関する従業員の意識が高く、組織に根付いていますが中国ではまだまだ。生産工場のラインでは、工程と工程の間に品質チェックを行う従業員を配置している日系企業があります。当然、チェックを行う従業員でかなりの人数になりますが、中国では品質保証するためにコストがかかることに注意しなければなりません。
整理・整頓の感覚も違うため、食堂に整理・整頓された状態とはこういう状態と見て分かるよう写真で表示しています。オフシェア開発でも単体テスト、システムテストのテスト項目やテスト結果をしっかりチェックしなければなりません。長期視点に立ってITベンダーを育成する気持ちで取りくむ必要があります。
■仕様の不明確さ
契約社会の欧米に比べ、なあなあの日本では受注側(日本)は仕様書に書かれていないことも阿吽の呼吸で考え作りこまなければなりませんが、そんな仕様書をもとにオフシェア開発することはそもそも不可能。