マーケティング/マーケティング事例

次世代自動販売機から読み解くマーケティングの極意

2010年8月、品川駅にこれまで見たこともない自動販売機が現れました。まるで液晶テレビのような自動販売機を使ってJR東日本は何をしようとしているのか? そのマーケティング的な狙いを読み解いていきましょう。

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

品川駅に設置された次世代自動販売機

次世代自動販売機

品川駅に設置された47インチのタッチパネル液晶を搭載した自動販売機

2010年8月、品川駅構内にこれまでに見たこともない自動販売機が設置されました。その姿はまるで巨大な液晶テレビ。47インチの大型スクリーンに映し出された数々の飲料を見て初めて自動販売機とわかります。いえ、もしかすると初めて見た方には、ただ単にジュースの広告が映し出されていると勘違いすることもあるかもしれません。それほどまでに既成概念を打ち破った自動販売機と言っても過言ではないでしょう。

この次世代自動販売機を仕掛けたのは、JR東日本ウォータービジネス。エキナカを中心に自動販売機などの飲料事業を手掛けるJR東日本のグループ企業です。

今回試験的に導入した次世代自動販売機は、品川駅に2台。今後2年を目途にJR東日本の主要駅構内に500台を設置していく計画です。

特徴は何と言っても、自動販売機の顔と言えるディスプレイに47インチのタッチパネル式大型液晶を採用したこと。通常の自動販売機はこのディスプレイ部分にサンプルが並びますが、この次世代自動販売機では液晶画面に数々の飲料が映し出されます。その商品1つ1つは、カメラマンが実物を撮影したものだけにリアル感に溢れていて壮観です。

また、人感センサーにより、液晶ディスプレイは普段人が自動販売機の前に立っていない時には、何となくユーモア溢れる顔になって購入を促したり、飲み物を飲みたくなるメッセージを流したりするなど、今流行のデジタルサイネージとしての役割も果たします。

極めつけは、販売機上部に取り付けられたカメラセンサー。このセンサーによって瞬時に購買者の性別と年代を判断して、季節や時間に応じたおすすめ飲料を提案してくれます。通常、1つの自動販売機では同じメーカーの飲料が並びますが、この自動販売機ではコカ・コーラや伊右衛門、オロナミンC、リポビタンDなど複数のメーカーの商品が並び、その中から自分に合ったものをすすめてくれる点もユニークです。

次世代自動販売機を仕掛けたJR東日本ウォータービジネスの狙いが『顧客起点で自販機の変革に取り組み、お客さまとのコミュニケーションにより、ちょっとFUN(楽しく)でSPECIAL(特別な)なひとときをご提供します』にあるように、これまで味気なかった自動販売機による購買体験に、自分だけにおすすめしてくれるというスペシャル感と楽しさが加わったことは間違いないと言えるでしょう。
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