食後にはサロンでワインを
メインダイニングの2階に用意されたテーブルでディナーが始まる。まずは英国のヴィンテージスパークリングで乾杯。ディルの風味をつけて、リークとディルが添えられた鴨のサラダ仕立てからスタートだ。岩魚のムニエルのソースが実に味わい深い |
岩魚のムニエルはケッパーと白ワイン風味の軽いバターソースが敷かれる。蜂蜜と柚子でマリネされた地元の野菜が添えられる。岩魚の繊細な皮の部分がギリギリの火加減で固められ、繊細で柔らかな岩魚の身にはまさに食べごろのタイミングで皿に盛られ、即座に運ばれる。こういう料理は経験がものを言う。これ以上もこれ以下もない隙のない美味なる味わいの組み立てにシェフの経験の深さを垣間見ることができる。
地の素材を使ったクラシカルなフレンチにはオーストラリアのシャルドネを。ワインについては料理に合わせてグラスでサービスされるが、英国の植民地であったオーストラリアのものが多く目に付く。フランスワインについては英国とゆかりのあるシャトーや生産者のものがならんでいるといったこだわりが垣間見えるところが面白い。
ふわりとした食感にソースが上品に絡む |
魚料理はスフレ仕立てのロブスターにサフランを効かせた濃厚なクリームソースが一体となって食欲を攻め立てる。攻め立てられてこっちはやや劣勢な態勢に持ち込まれる。実はこの日はご多聞にもれず高度1000mでもやや暑い夜で、料理の濃厚さが外気の暑さと交じり合って、やや食べ疲れしてしまう環境であったことを書いておかねばならない。
レモンバームのグラニテのあと、メインはヨークシャープディングが添えられたローストビーフを。ホースラディッシュのソースを選び、ここでほっとしつつもガッツリと肉をいただく。
厚切り2枚のビーフをしっかりいただく |
チーズのあとのデザートはこれまた非常にクラシカルなフルーツのフランベのデモンストレーション。グレープフルーツ、オレンジ、アップルに炎と共にブランデーの香りをつけてひとつひとつ、ゆっくりじっくり盛り付けられる。これなら赤ワインにあうデザートと言えるかもしれない。
じっくり時間をかけてフランベされるフルーツの数々 |
今回のディナーは決して現代風ではない、クラシカルな調理法にシェフの持つこだわりを楽しんだが、メニューを見ると軽いタイプのコースもあるようだ。予約の時にワインをたっぷり飲むといったことをリクエストしておいたので、それに合わせたパワフルな料理が用意されたようだ。
ブランデーの高貴な香りが漂う |
ディナーのあとは再びサロンに戻り、ワインを。いくつかの中から選んだのはルイ・ジャドのグリオット・シャンベルタン。ゆっくりゆっくり開いていくピノ・ノアールの香りに酔いしれている間に夜はどんどん深くなっていく。
時間が止まる感覚にさえ陥る中世英国のサロン |
これからの季節、夜と朝は深い霧に包まれることも多い。美食、環境、建築物、気候、どれをとっても東京では絶対に味わえない非日常がある。東京から車で3時間もあれば到着だ。地方で滞在型美食が楽しめる時代がやってきたことは実に嬉しいことである。
ゲストハウスも一つひとつが歴史と個性に満ちている |
ブリティッシュヒルズ
福島県岩瀬郡天栄村大字田良尾字芝草1-8
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地図
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