あなたは滞りタイプ? それとも栄養不足タイプ?
「通じざれば即ち痛む」と「栄えざれば即ち痛む」。 生理痛も同じメカニズムでご紹介しましたね
漢方では、このような症状が起こる原因を「通じざれば即ち痛む(滞りタイプ)」と「栄えざれば即ち痛む(栄養不足タイプ)」の2つに大きく分けて考えます。
「通じざれば即ち痛む」とは、流れが悪いのでコリや痛みが出やすくなるという意味。運動不足や長時間の同じ姿勢、ストレスによる自律神経のバランスの乱れや冷えなどで血流が悪化し、栄養や酸素を筋肉に供給できなくなり、老廃物を回収できず、肩こりを起こします。
「栄えざれば即ち痛む」とは、血の不足によって筋肉に栄養を与えられないことを指します。もともと胃腸が弱かったり、虚弱体質や慢性病などで体内の血が不足し、その結果酸素や栄養を送ることができずに肩こりになってしまうのですね。
「流れが滞るタイプ」の肩こりで代表的な漢方薬
ストレスタイプと、血行不良タイプの2つにわけて考えるができます。どちらも肩こりの症状がひどかったり、食生活や生活環境から起こる場合が多いようです。■ ストレスで自律神経が乱れる肩こり
ストレスなどで自律神経のバランスが乱れ、血流が悪くなり、栄養や酸素がスムーズに行き渡りません。イライラすると肩こりがひどくなる、運動すると肩こりが楽になる、揉むのを嫌がるなどの症状があります。
このような場合は、気や血の流れをよくしてコリをほぐす「加味逍遙散」(かみしょうようさん)や、「抑肝散加陳皮半夏湯」(よくかんさんかちんぴはんげ)などが代表的。
■ 冷えなどで血行不良になる肩こり
冷たいものの摂りすぎや、冷房、打撲などで血流が悪化し、筋肉に栄養や酸素が届かなくなります。痛みの度合いが強く、夕方に痛みが激しい人も。頭はのぼせるが手足は冷たいなど、冷えのぼせの症状をともなう場合もあります。
冷えによる肩こりは最近女性に多くみられます。冷えによる血行不良には、「温経湯」(うんけいとう)や「桂枝茯苓丸」(けいしぶくりょうがん)が有名です。田七人参(でんしちにんじん)という生薬入りのシップなども売られていますが、これも血液循環が悪いタイプに使用できます。
「栄養が届かないタイプ」の肩こりで代表的な漢方薬
不栄タイプによくあるのは、内臓の働きが低下しているケースと、血液不足のケース。疲労などで起こる場合もありますが、体質的なものも多いようです。
■血液不足による肩こり
過労や睡眠不足などによって血液が消耗し、筋肉に栄養や酸素を与えるための血が不足して肩こりが起こるパターン。もともと筋肉量が少ないタイプや、筋肉のひきつりやしびれがある人も。
血液を養い、カラダに栄養を与える“補血剤”としてベースになるのは「四物湯」(しもつとう)です。気力や体力も低下している場合は「十全大補湯」(じゅうぜんだいほとう)や「人参養栄湯」(にんじんようえいとう)なども用いることができます。
■ 内臓機能の低下による肩こり
もともと虚弱体質だったり、疲れや老化などから内臓の働きが低下して、筋肉に栄養が届きにくいために起こります。疲労によって肩こりが悪化し、もまれると気持ちよく感じます。自分では肩こりだと思っていても、局所は柔らかくて他の人からはコリがわからないなんて場合も……。
落ち込んだエネルギーを持ち上げたり、胃腸の働きを整える「補中益気湯」(ほちゅうえっきとう)が代表的です。ちなみに処方名の“中を補う”とは、漢方では中焦、つまり“胃腸”の機能を補うという意味なんですよ。
漢方を試したい場合は、漢方の専門家に相談してから購入くださいね。なお、パソコン作業が多い人は仕事の合間に肩を回したり、目のマッサージをするなど、休憩をはさみましょう。姿勢を正すだけでも違いますよ。