抑肝散とは……精神面、筋肉や眼に作用する漢方薬

イライラした女性

抑肝散には心身の興奮や緊張を緩和する作用があります。元々は子供のかんしゃくなどに用いられた漢方でしたが老若男女問わず使用できます


抑肝散(よくかんさん)は柴胡(さいこ)、釣藤鈎(ちょうとうこう)、当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、甘草(かんぞう)という生薬から構成される漢方薬です。
 
抑肝散はその名前から「肝臓病の薬かな?」と思われるかもしれませんが、これは誤解です。抑肝散における「肝」とは漢方の世界において精神状態を安定化したり、筋肉や眼のはたらき維持する「はたらき」を指しています。物質的な「肝臓」を指しているわけではないのです。したがって、抑肝散は主に精神面にくわえて筋肉や眼に作用する漢方薬になります。
 

抑肝散の効果……イライラ、小児かんしゃく、更年期障害などに有効

厚生労働省が作成している一般用漢方製剤承認基準によると、抑肝散は、体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症……神経症、不眠症、小児夜泣き、小児かんしゃく(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、女性ホルモンの変動による心身の不調を指す「血の道症」に有効です。
 
抑肝散はもともと、お子様の精神的なトラブルに対して創作された漢方薬でした。そのような経緯もあり小児夜泣きや小児かんしゃくにしばしば使用されます。一方で正しく使用すれば成人の方でも問題なく服用できます。
  

抑肝散の効果が発揮されるまでの期間・持続性

抑肝散は即効性が期待できるタイプの漢方薬ではありません。したがって、服用からある程度の効果の実感が得られるまで、2~3ヵ月は継続的に服用するのが良いでしょう。
 
逆に服用を中断したらすぐに効果がなくなってしまうものでもありません。しかしながら、ストレスが強くかかっている時期や春先といった季節の変わり目に体調を崩しやすい方は、その時期は予防も兼ねてしっかりと服用することをお勧めします。
 

抑肝散はいつ飲めばいい? 食前や空腹時のタイミングが基本

抑肝散に限らず漢方薬全般は食事の約30分前の食前や空腹時が基本となります。一方で服用後に胃もたれなどの不快症状が起こるようでしたら、食後服用に切り替えるように私の薬局では説明しています。
 

抑肝散の飲み方・止めたいとき

基本的には温かいお湯で服用します。粉薬の服用が苦手な方はお湯に溶かしてから飲んだり、服用を補助するゼリーやオブラートなどを使用してみるのが良いでしょう。

また、抑肝散はどのタイミングで服用を止めても反動が出たり副作用が起こることはありません。一方で体調が改善しても、精神的なストレスが多い時期などは継続して服用することをお勧めします。
 

抑肝散の副作用・安全性・子どもの服用について

抑肝散はマイルドで非常に安全性の高い漢方薬といえます。一方で抑肝散を構成する生薬である甘草(かんぞう)は稀に偽(ぎ)アルドステロン症を引き起こすことが知られています。
 
偽アルドステロン症は身体の中でカリウムという物質が減ってしまうことで起こる副作用です。このような低カリウム血症に陥ると血圧上昇、むくみ、筋肉痛、手足の重だるさなどが現れやすくなります。
 
一方で偽アルドステロン症の発生頻度は高くはないので過度に心配する必要はありません。上記のような症状がみられた場合はまず医療機関にお問い合わせください。

そして上記でも述べた通り、抑肝散はお子様でも問題なく服用できます。胃腸にも優しく、幅広い方にお勧めしやすい漢方薬と言えます。一方で漢方薬には独特の香りや風味がありますので、上手く服用できないようでしたらオブラートや服用を補助するゼリーなどを使用するのも良いでしょう。
 

抑肝散を大量摂取してしまった場合のリスク

誤って大量摂取した際などは、上記で挙げた偽アルドステロン症に注意が必要です。大量摂取にくわえて抑肝散と一緒に甘草を含む他の漢方薬と併用する際も注意が必要です。この理由は偽アルドステロン症は服用する甘草の量に比例して現れやすくなるといわれているからです。
 

抑肝散の買い方・費用の目安・メーカーによる違い

抑肝散はメジャーな漢方薬なので漢方専門薬局でしたらほぼ確実に取り扱いはあるかと思います。最近はドラッグストアでも漢方コーナーが充実しているので、そちらでも購入できるかもしれません。

一部を例として挙げると、全薬工業株式会社が販売しているアロパノール(147錠)は大人の場合で7週間分、希望小売価格3,900円(税抜き)。一元製薬株式会社が販売している一元乃錠剤抑肝散(350錠)は大人の場合で約23日分、希望小売価格4,000円(税抜き)です(2019年7月現在)。
 
他にもほとんどの漢方専門薬局ではご自宅で煎じて(煮詰めて)服用する煎じ薬(せんじぐすり)としても抑肝散を扱っています。その場合は各薬局ごとに価格が異なるので事前に問い合わせてみるのが良いでしょう。
 
抑肝散は本来ならば生薬を細かくすりつぶして作られた散剤(さんざい)として服用されます。しかし、今日では有効成分を取り出して細粒などにしたエキス剤、エキス成分を成形した錠剤といったバリエーションがあります。

また、同じ抑肝散でもメーカーによって剤形が異なる場合があります。服用のしやすさなどを念頭に選ぶのが良いでしょう。
 

抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)との違いは?

抑肝散とよく似た漢方薬に抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)があります。これはその名前の通り、抑肝散に陳皮(ちんぴ)と半夏(はんげ)という2つの生薬が追加されたものです。
 
この2つの生薬が加わったことで吐気や嘔吐、胃腸の張り感といった症状を改善することができます。ざっくりとしたイメージとしては抑肝散に胃腸薬がプラスされた感じです。もし抑肝散が手に入らない場合は抑肝散加陳皮半夏でほぼ代用可能です。
 

抑肝散の服用を検討されている方へ

もともと抑肝散はお子様のかんしゃくや夜泣きを改善する目的で生まれた漢方薬でした。しかし、現在では老若男女問わず服用されています。
 
私が営んでいる漢方専門薬局でも、仕事上の些細なトラブルですぐにイライラしてしまう方、育児で怒りっぽくなっている方などにも幅広く服用して頂いています。気分が沈んでしまう方よりも、どちらかというと興奮してしまうケースに有効な漢方薬です。
 
他には精神的な症状にくわえて頭痛、めまい、眼精疲労、首肩の筋肉の凝り、歯ぎしりや食いしばりといった「首から上のトラブル」にも効果を発揮します。
 
このように抑肝散は過度な精神的負担などによって起こるさまざまな症状に対応可能な漢方薬です。長時間労働に代表されるストレス社会の今日、抑肝散が活躍する場は増えている印象があります(余談ですが私自身も服用することが多い漢方薬のひとつです)。
 
もし挙げてきたような心身の不調が目立つような場合、漢方専門薬局へご相談してみるのはいかがでしょうか。
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