働く意欲をアップさせるのは何?
札束を積まれれば、働く意欲が湧くのか? |
ここで、従業員の労働意欲について調査した、ある有名な実験を紹介しましょう。1920年代にメイヨーが行った「ホーソン実験」と呼ばれるものです。
当時、3万人近くの従業員を抱えていたウエスタン・エレクトリック社(米)のホーソン工場では、従業員の不満が多いことに頭を抱えていました。「他社に比べて、給料や福利厚生も充実しているのに、どうしてだろう」と悩み、メイヨーに調査を依頼したのです。
まず、作業環境や労働条件を改善してみたのですが、はっきりした効果はあらわれませんでした。そこで、従業員の心に目を向けてみたところ、明らかな変化が認められました。従業員の悩みに耳を傾け、人間関係が改善されるように調整するなどして、意欲が高められるように取り組んでみたのです。すると、労働意欲は格段にアップして、生産性向上に結びつくことができました。
無力感は「学習」される!?
ショックを与え続けられたら、イヌでも無気力になる |
いくら景気がよくなって、給料の上昇が見込まれても、パワハラに耐えなければならない職場だったらどうでしょう? 達成した仕事を、誰も評価してくれないような職場だったらどうでしょう? やはり、無力感が募り、働く気が萎えてしまうのではないかと思います。
こうした無力感は、そのままにしておくととても危険です。それについては、セリグマンがイヌを使って行った実験でも証明されています。イヌの体を縛りつけて、逃げられない状態にして何十回も電気ショックを与えました。そして、次の日には動いて逃げられる状態にして、電気ショックを与えました。しかし、イヌたちは逃げ出すこともなく、無気力のまま、おびえながら電気ショックを受け続けていたのです。
このように、自分の努力によって状況を変化させることができなくなると、「無力感」が学習されてしまいます。すると、「何をやってもダメだ」というあきらめの境地に入り、現状を変える意欲どころか、逃げ出す気持ちさえも起こらなくなるのです。
働く人の状況も、これと同じではないでしょうか?「お前はダメだ」と言われ続けたり、がんばっているのに何の評価もされないで働いていると、無気力なまま、惰性で会社に通うだけの日々になってしまうのではないかと思います。