ストレス/年代別・世代間のストレス

「ミドルエイジクライシス」中年の危機を乗り切る!

【公認心理師が解説】中年の入り口は「アラフォー」と呼ばれる40歳前後です。この頃から、中年期ならではの心理的危機「ミドルエイジ・クライシス」(中年の危機)に注意する必要があります。中年期は心が不安定になりやすい年代。だからこそ、自分の人生をじっくり考えるチャンスでもあります。ミドルエイジ・クライシスの乗り越え方のヒントをお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

中年の入り口はアラフォーと呼ばれる40歳前後

「ミドルエイジクライシス」中年の危機を乗り切る

40歳前後から人生の見直しを始めましょう

中年(ミドルエイジ)の入り口は、何歳くらいかご存知ですか? ユングは人生の折り返し地点を40歳頃と考え、この時期を「人生の正午」と呼びました。この「人生の正午」と呼ばれる40歳前後、つまり「アラフォー」と呼ばれる年齢から、何に価値を置いて生きるか、物の見方や考え方がダイナミックに変化していくのです。

そして、ミドルエイジは「思秋期」とも呼ばれています。思春期は子どもから大人へと心身共に成長していく中高生の年齢にあたりますが、思秋期は、ミドルエイジの前期である40代頃に相当します。この思秋期に、人は若い頃の価値観や生き方を見直し、人生の後半をどう生きるべきかを考えていくようになるのです。

 

ミドルエイジ・クライシスとは?

微笑む3人家族

ミドルエイジの課題を把握し、その課題と対峙できていますか?

そして、中年期は心理的危機に直面しやすい年代であり、この心理的危機を「ミドルエイジ・クライシス」(中年の危機)と呼びます。

ミドルエイジには、仕事や家庭をはじめ、あらゆる面でストレスがのしかかります。たとえば職場では管理職として、仕事でかかわるすべての人とバランスをとりながら、調整していく任務を任されることが増えます。家庭では、子どものこと、家計のこと、老いていく親のこと、自分の老後のことなど、取り組むべき課題の数が急に増え始めます。

このように、その年齢だからこそ気づき、取り組むべき自分の課題を認識できないことが、ミドルエイジ・クライシスの発生に影響している場合もあります。その年齢なりの課題に気づかず、気づいても後回しにしていると、突然その課題に直面した時にどうしたらいいのか分からず、パニック状態になってしまいます。

 

ミドルエイジの初期は後半生の人生課題を再構築する好機

こうならないためにも、ミドルエイジの初期には前半生を振り返り、後半生の人生課題を再構築するべきなのです。この取り組みには、今後直面すると考えられる課題を洗い出し、準備をしていくことが必要です。たとえば次のようなことが、後半生に取り組む課題として挙げられます。

例)
健康 ・自分自身の健康チェックと定期的な健診の受診
・健康管理の見直し(食生活、睡眠、休養、運動、飲酒、喫煙習慣等)
・家族の健康と心の状態の把握
 
仕事 ・今後の仕事の目標の見直し
・部下の指導、職場の人間関係の問題の把握
・後半生の職業人生に必要なスキルアップの計画
・仕事におけるストレス対策の検討
 
家庭 ・後半生の夫婦のあり方についての検討
・子どもの学費、将来にかかる予算の把握
・住宅ローンの返済計画の見直し
・老後についての大まかなビジョン
・家族へのかかわり方の見直し
 
両親の問題 ・実親、義理の親との関係性の見直し
・親の老後や介護についての大まかな把握
・親の死後に行うべきことの大まかな把握
 
人付き合い ・交友関係の見直しと新たな関係の構築
・セーフティーネットとなる人的資源の確保と調整
 
人生の生きがい ・後半生のライフワークとなるものの発見と育成
・心身共に充実した人生を実現するためにできることの発見と着手
 
金銭面、資産 ・財産、資産の把握
・年金、各種保険の見直し
・貯蓄・積み立て計画の見直し
・お金の使い方の見直し
・老後の資金計画の開始
 
 

ミドルエイジ・クライシスは自分の人生に向き合う絶好のチャンス

「ミドルエイジクライシス」中年の危機を乗り切る 

後半生のポジティブなビジョンをしっかり描けていますか?

「人生の正午」となるミドルエイジの入り口から、少しずつ上のようなことを考えたり、取り組み始めたりすることは、後半生を能動的に生きるために必要です。

忙しさにかまけて後回しにしていると、後半生で本当に取り組みたいことに気づかず、充実した後半生への希望も見失ってしまいます。逆に、「なるようになるさ」と楽観的に構えているだけでもダメです。これだけでは、人生の後半で思わぬ落とし穴にはまったときに急に課題を突きつけられ、慌ててしまいます。

とはいえ、心配しすぎることはありません。まずは、後半生のポジティブなビジョンを思い描いてみましょう。人生100年時代、後半生には長く充実した時間が待っています。それを実現するには、まず10年先、20年先の自分をざっくりとでも想像してみることです。

その方法としてお勧めなのが、「ミラクルクエスチョン」という質問技法です。この技法を使って「ある日の自分」を具体的に想像し、後半生のビジョンを明確にしてみましょう。「ミラクルクエスチョン」のやり方は、こちらの記事で紹介しています。新年こそ!「なりたい自分」になる奇跡の質問 

巷にはお金の問題、病気、孤独など、後半生を不安にさせる情報があふれ、垂れ流しになっています。こうした情報を見聞きするたびに悲観し、年齢を重ねることを恐ろしく感じてしまうかもしれません。
 
しかし、不安になることはありません。ポジティブなビジョンを描き、その実現のために少しずつでも建設的な計画を実行していれば、未来はとても明るいものになります。人生は、楽しみながら歩んでいくもの。ぜひ、ポジティブな気持ちでご自身の後半生を思い描き、実現のために一歩一歩進んでいきましょう。

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