熟年から心の危機を防ぐ3つのポイント
他人や社会とのかかわりのなかで、心の柔軟性は養われる |
しかし、心が柔軟になっていないと、定年退職後、また子どもたちが巣立ち、妻や夫が先立った後などに、急にむなしさに襲われ、自分自身の殻に閉じこもってしまうかもしれません。
それを防ぐためには、早いうちから心の柔軟性を高めていく努力をする必要があります。そのための基本的な心得として、以下の3つをぜひ参考にしてみてください。
1)元気なうちに「現役引退」はしない
少子高齢化社会の進展と共に、「老後」の捉え方はガラリと変わろうとしています。大変な時代ではありますが、逆に心の老化を防ぐよい契機でもあります。心身が元気なうちに、急に老後の生活に突入してしまうと、急に社会からの疎外感を感じ、むなしさに襲われやすくなるからです。近年話題になっている「定年後のうつ」の多くも、このことと大きく関係しています。
雇用形態や賃金、勤務先が変わっても、働けるうちは働き、社会の一員としての役割を果たしていく。元気なうちはこの「現役精神」をなるべく長く持ち、社会や他人と関わりながら生きていくことが、心の老化を防ぐことにつながります。
2)“身体”を使って誰かの役に立つ
自分だけの満足や楽しみに閉じこもり、他人と喜びを分かち合えないでいると、心の柔軟性はどんどん低下していきます。一方、他人や社会の役に立つ機会が多くなれば、コミュニケーションが増え、笑顔やときめきも増えていくでしょう。
ただし身体は動かさず、「口」だけで他人の役に立とうと考えてしまう人が多いもの。特に頭でっかちになりやすい熟年層こそ、積極的に身体を使って、他人の役に立つ意識が必要になります。
まずは身体を使って、身近な人の手伝いをしてみましょう。妻に代わって買い物に行く、孫や近所の子どもの面倒を見る、隣のお年寄りの通院のために車の送迎をしてあげる。こんなささいなことでも、誰かの役に立つ経験を重ねていけば、心の老化を防ぐことができます。
3)意見を言わずに、他人の話をじっくり聴いてみる
心の柔軟性が低下してくると、自分の考え方だけにこだわったり、自分の話だけに終始することが多くなり、次第に自己中心的になっていきます。
特に、熟年層の場合、人に指導や指示をすることが多くなり、他人の立場に立って、共感的に話を聴く機会が少なくなっているのではないでしょうか? しかし、「聴く力」が衰えると、自然に他人を理解することができなくなり、思いやりや感受性が育たなくなってしまいます。
自己中心的になるのを防ぐには、他人の話をじっくり聴く練習をするのが効果的です。まずは、身近な人の話にじっと耳を傾けてみましょう。「こうしたほうがいい」「私の場合はこうだった」と言いたくなっても、その言葉は飲み込み、ひたすら話を聴きましょう(ただし、長時間聴くのは疲れてしまうので、最大でも1時間を限度にすること)。
そして、「大変な思いを抱えてるんだね」などと相手の心情を察し、その気持ちを言葉にして投げ返してあげることが大切。こうしたやりとりによって、心の柔軟性が養われていきます。