さらに、こうしたあせる気持ちが強いと、知らずしらずのうちに周囲の人間にも影響を及ぼしてしまうことがあり、やっかいです。とくに、あせりの犠牲となりやすいのが、子どもです。
たとえば、子どもの成長や学習能力、運動能力などを他人と比較してせかしたり、情報の高度化や社会の急速な変化に対応するべく子どもを早いうちから教育に駆り立ててしまうこともあるでしょう。また、親が果たせなかった理想を早いうちから子どもに押しつけ、子どもが自分で人生を選択する自由を奪ってしまうこともあります。
このように子どもの成長を急がせようとする傾向は、急激に社会が発展した国でよく見られる現象だといわれます。たとえば、建国から200年あまりで劇的な成長を遂げたアメリカ、戦後から20~30年あまりで急成長をとげた日本、そしていま急激に成長している韓国や中国などのアジアの国々では、子どもを早くから教育に駆り立てる例が目立っています。この根底には時代の急激な変化に戸惑う親世代に相当なあせりの気持ちがあり、子どものゆっくりした成長を見守る余裕がなくなっているのではないかと思います。
しかし、子どもの成長を急がせると、どこかで必ずそのひずみが生じます。子どもはいくつかの自律期を経て、長い年月をかけて大人になっていくものです。そして、子どもはそれぞれ独自の性格や物事への感受性をもっているため、親がいくら自分の価値観を押し付けても、その価値観に合わないときにはやはりストレスを感じてしまうものです。
こうした成長のステップや子どもの性格を無視して、親が子どもにストレスを与えつづけるとどうなるでしょう。逆に子どもの心の成長は阻害され、いつまでもどこか大人になりきれない部分が残ってしまったり、失敗したときにも親や他人のせいにしてしまうようなゆがんだ心をもってしまうこともあります。親は「子どもに愛情を感じているからこそ、教育の機会を与えてあげたのに」などと思っていても、これを苦痛に思ってしまったら子どもは愛情不足を感じたまま育ってしまうのではないでしょうか。
このように、あせりは自分の心だけの問題ではありません。子どもや家族など周りの人に及ぼす影響も大きいものです。あせりの気持ちを感じたときには、まず自分の心と向き合うゆとりをもって、自分がいちばん豊かに感じられることはなんなのかを見つけていく必要があるのではないかと思います。
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