---それでは、「EAP」の導入が必要とされる会社は、どんな会社なのでしょう?
永井 日本でも業種や規模の大小に関係なく、本来どこの会社でも取り組むべきでしょう。メンタルなストレスが発生しやすい会社ではなおのこと必要です。いずれにしても、専門家のサポートがぜひとも必要です。
しかし、日本の企業人事の多くは今、成果主義に夢中になっています。成果主義さえ実現できれば、組織上の問題を全て解決できると考えている会社もあります。社員にメンタルな問題が現れても、例外的な出来事と決めつけてしまい、具体的な対策や組織のあり方を考えることは稀です。
私もいろいろな会社の人事問題に関わっていますが、どこの会社も、日々の実績に追われて戦々恐々としており、精神的に疲労困憊しています。こんな状態では、組織の力が強くなるはずもありません。真に強い会社をつくるためにも、社員のメンタルな問題にもっと真剣に目を向ける必要があるのではないでしょうか?
EAPに取り組むNPOとして設立された「日本EAPコンサルタント」の副理事長をされている伊丹安雄氏は、「あと一歩進むと、心の病に繋がりかねない状態が増えているのに、企業の中では、なかなか発見することが難しい。思いきって社外の専門家に任せたり、カウンセラーに相談すれば、早期に確かな成果も得られるのに」とコメントされています。私も同感です。
内部では本音を話せない社員にとって、外部の専門家で守秘義務があるからこそ役に立てるのだと思います。
上司によるパワハラをきっかけに、心の病に発展するケースも珍しくないと指摘する永井さん。しかし、今の日本企業では、こうした被害で生じた病気に対して、ほとんど対策がとられていないのが実情です。心の病は、まだ社内では“市民権”を得ていない病気なのかもしれませんが、EAPなどの取り組みは、長い目で社員のパフォーマンスをアップし、業績を向上させていくためにも、たいへん重要となるのではないでしょうか。
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話題の“パワハラ”ってなに?
話題の“パワハラ”ってなに?
永井隆雄さん 1963年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。日本総研、朝日監査法人等を経て、現在は、JEXS組織戦略研究所所属。職業適性試験の開発などの従事。産業・組織心理学会会員。ASTD及びSHRMの会員。著書に『優秀な部下が辞表を持ってきた時』、『人事コンサルタントが書いた転職心理作戦』など多数。HRMに関する海外事情にも詳しい。 |
■関連サイト■
・永井さんが所属する研究所のホームページ
→JEXS組織戦略研究所
・当サイトのリンク集
→【All About Japan】ストレス-仕事とストレス