前回パワハラの概略についてお話いただきましたが、今回はパワハラなどの影響で社員のやる気やパフォーマンス、ひいては職場全体の能率にまで悪影響を及ぼしているという現実を見つめ、その対策について考えてみたいと思います。前回にひきつづき人事問題にくわしいJEXS組織戦略研究所の永井隆雄さんにお話をうかがいました。
 
▼パワハラシリーズ第1弾▼
話題の“パワハラ”ってなに?

???永井さんはパワハラが職場全体の能率に悪影響を及ぼしているとお考えですが、それは一体どうしてでしょう?

永井 パワハラは、その被害に遭った個人の問題に過ぎず、会社全体から見ればマイナーな問題に過ぎないと考える人もいます。あるいはパワハラをするような上司など一部であって、それが会社全体の問題とは言いがたいと考えてしまいがちなことも否定できません。

社員から「被害を受けた」と申し出ることはまだまだ珍しいケースですし、パワハラのために職場の能率が水面下で大きな悪影響を受けている会社がごまんとあると考えてまず間違いないでしょう。

最近の米国の大手企業では、パワハラなど社員のパフォーマンスに悪影響を与える問題に対し、会社として積極的に取り組むスタンスをはっきり示しています。

一方、日本では社員のパフォーマンスとパワハラは関連しないものであり、むしろ上司のやる気が勢いあまってしまった結果だと考える傾向すらあります。そこには会社にパワハラを容認する風土、助長する組織の構造的問題が横たわっているように思えてなりません。

???では、米国の企業では実際にどんな対策を始めているのでしょう。

永井 職場におけるパワハラ解決の一環として、「EAP」が注目されています。EAP(Employee Assistance Program/従業員支援プログラム)とは、社員の個人的な問題や、仕事にまつわる問題の発見及び解決をサポートし、企業全体の生産性の向上を支援するメンタルヘルスプログラムのことです。

具体的には、臨床心理や精神衛生に関する専門家である産業カウンセラー産業医が従業員の相談に乗ったり、定期的にメンタルヘルス(精神衛生)や広く職場のストレスに関して実態調査を行うことなどによって、予防策を講じます

日本でも、厚生労働省の指導でそのような専門家を社内に配することが義務づけられています。しかし、意識的に取り組まれているとは到底いいがたく、自社に問題があっても直視せず黙殺する傾向があることは否めないのです。

???実際、このEAPを導入したことにより、企業のコスト削減や生産性の向上に好影響を与えていると聞きますが。

永井 米国では、EAPによるメンタルヘルス対策への投資利益が、対策をとらなかった場合の損失・補償にかけるコストを大きく上回るということが実証され、EAPの効果と信頼性は大きく認められています。

既に『FORTUNE』誌のトップ500企業の約95%が、社員の心の健康を守るためにEAPを導入しているそうです。

コストの削減効果としては、自動車メーカーのゼネラルモータース(GM)社のケースがあります。ここでは、欠勤率(40%ダウン)保険給付金(60%ダウン)が低減されたと報告されています。

また生産性の向上では、マッシュ・アンド・マクレーン社が1994年に50社に対して行った調査があります。これによると、欠勤率(21%ダウン)、仕事上の事故(17%ダウン)が低減し、それらによる生産性向上が14%アップということです。

さらに、もちろんEAPに取り組んでいるということで、会社のイメージアップにもなるという利点もあります。


 
どうする?どうなる?日本の企業の場合
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