---順応性が高いことだけが、高いパフォーマンスに結びつくとも思えないのですが。
もちろんです。順応性が低いということも重要な個性ですし、順応性だけが高くても高業績者にはなれません。しかし、従順性の低い人は、しばしば上司や先輩の指導育成への取り組みにネガティブな感情を抱き、しだいに高度な指導を受けることも与えることも難しくなってしまうというのが実情のようですね。
---親の育て方や学校教育のあり方なども関係しているのでしょうね。
その影響もすごく大きいですね。自分が感じたストレスの処理の仕方を学んでいないと、組織とぶつかりやすくなってしまうこともあるようです。
ところで似たケースに、"仕事はできるのに出世できない"というパターンがあるのですが、これにはさらに複雑な特性が絡み合っています。AGP行動科学分析研究所の調査によると、下表のような行動特性を備えた人でないと人の上に立ちにくいことが実証されています。
行動特性
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特 徴
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公私のバランス
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時間の使い方がうまく、必要以上に残業しすぎて疲弊する、ということがない |
ハードワークのみを人生の目的ととらえず、バランスのとれた生活を送っている | |
プライベートな部分も含め、生き方が周囲のモデルになっている | |
公私混同をすることなく、金銭の使い方がクリアである | |
自尊感情への
配慮 |
相手の感情や自尊心を的確に把握し、配慮ある言動をとることを心がけている |
とりとめもなく自慢話をしたりすることがなく、相手が好まない話題は意識して避けている | |
話題ややりとりによって、相手がどのように感じているかを敏感に感じとり言動を修正している | |
どんな相手でも自尊心を尊重し、効果的に意図を伝えて意思疎通を図っている |
---なるほど。上に立つにはさらに周囲の尊敬を集める人間性が重要なわけですね。
そうです。バリバリ仕事をこなしていればいいというわけでなく、プライベートも充実していること。つまり、自身のストレス管理がうまいことが出世するひとつのポイントになります。さらに、周囲の人の自尊心や誇りを大切にしてあげられること、つまり他人に不要なストレスを与えないことも非常に重要です。以前にも触れたようにパワハラをするようなタイプでは、出世は望めません。
---しかし、実際にはパワハラをする上司にも出世している人はたくさんいます。
成果だけを判断の基準にしてパワハラ行為を放置していたり、より高い位置まで出世させるような会社は、本当の意味での強い組織、長続きする組織にはなれません。終身雇用制度に守られ、経済成長の途上にあった従来なら、多少のパワハラ上司がいても問題は表面化しなかったでしょう。しかし、終身雇用制が崩壊し、経済が低迷している現在には、このような上司がいることは、社員のパフォーマンスを悪くし、組織力を弱めることにつながるのです。
会社という組織で経済活動を行っている以上、組織の結束は非常に大切です。そして、強固に見える組織も、ちょっとした人間関係のもつれやストレスによってもろくなっていくものです。「自分は仕事ができるのに、どうしてうまくいかないの!?」と悩んでいる若者は順応性について、また出世に悩んでいる人は総合的な人間性についてよく考え、気づいたところから修正を試みてみることも大切なのではないでしょうか。
成果だけを判断の基準にしてパワハラ行為を放置していたり、より高い位置まで出世させるような会社は、本当の意味での強い組織、長続きする組織にはなれません。終身雇用制度に守られ、経済成長の途上にあった従来なら、多少のパワハラ上司がいても問題は表面化しなかったでしょう。しかし、終身雇用制が崩壊し、経済が低迷している現在には、このような上司がいることは、社員のパフォーマンスを悪くし、組織力を弱めることにつながるのです。
会社という組織で経済活動を行っている以上、組織の結束は非常に大切です。そして、強固に見える組織も、ちょっとした人間関係のもつれやストレスによってもろくなっていくものです。「自分は仕事ができるのに、どうしてうまくいかないの!?」と悩んでいる若者は順応性について、また出世に悩んでいる人は総合的な人間性についてよく考え、気づいたところから修正を試みてみることも大切なのではないでしょうか。
永井隆雄さん 1963年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。日本総研、朝日監査法人等を経て、現在はJEXS組織戦略研究所所属。職業適性試験の開発などの従事。産業・組織心理学会会員。ASTD及びSHRMの会員。著書に『優秀な部下が辞表を持ってきた時』、『人事コンサルタントが書いた転職心理作戦』など多数。HRMに関する海外事情にも詳しい。 |
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・永井先生が所属する研究所のホームページ
→JEXS組織戦略研究所