北京オリンピックでみせた
北島康介選手の“驚異的な強さ”の秘密
「〈勝負脳〉を鍛える」スポーツをするのも観るのも大好きな脳神経外科医、林成之教授が、勝負に勝つための脳の使い方、脳の仕組みを解説したものです。 |
いつも強気にみえる北島選手ですが、アテネ大会以後、メダリストが陥る目的喪失感からのモチベーション低下、勝てない日々、さらにケガと、不調が続いていました。そんな彼が、ゆるぎない自信と強さを身に付けて北京オリンピックの舞台に登場してきました。各メディアが、その強さの影に「勝負脳」あり、と報道していました。これは、北島選手がインタビューで、「勝負脳を鍛えたおかげです。」とコメントしたからです。勝負脳とは、脳神経外科を専門とする日本大学大学院の林成之教授が命名したものです。一言でいうと、「勝負に勝つために戦略を練る知能」ということで、言葉を話す・数を計算する・空間を認知する知能などとともに人間の脳に本来そなわっている知能の1つだということです。北島選手は、オリンピック前に、林教授から、勝つための脳の使い方のレクチャーを受けていました。超ポジティブな北島選手は、林教授の教えをしっかり取り入れて、さらにメンタルを強化したようなのです。
脳の働きを知って勝負に勝つ!
林教授は、北島選手をはじめ日本競泳チームのメンバーへ、次のような必勝理論を伝授していました。■勝負脳を発揮するには
・ライバルに勝とうとするのではなく、自己記録の更新にこだわる
・常に、自己ベストの3割増の力を出そうとする
・疲れた、大変だというような否定的な言葉を使わない
・調子のいい時は休まず、アグレッシブにやり続ける
・最後まで「勝った」と思わない
・プールと自分が一体化するイメージを持ち、自分の世界を作る など
北島選手が特に意識したのは、「ネガティブなことを考えた瞬間に、脳と体のスイッチが切れて、最高のパフォーマンスがでないということから、否定的な言葉を使わないようにすること」「ライバルに勝つのではなく、過去の最高の自分を超えることを目標にする」、この2つだったそうです。
金メダルを取るためには、ライバルに勝つ必要があります。しかし、ライバルに勝とうとするのではなく、「過去最高の自分の記録を超える」ことを目指して泳ぐ。これは、100Mの決勝戦でみせてくれた、あの泳ぎそのものではないでしょうか。ストローク数を押さえて、彼の強さの特徴を最大に生かしたレース展開。完璧な泳ぎと評されました。